第62話 一斗のマンションにて


 “来夢、どこにいるの?迎えに行くからね!”夢奈


 “うるは、今日の夜これからなら会えるよ”一斗


 丁度良かった。


 さっきの作戦を実行してみるチャンスだ。


 夢奈と一斗それぞれに4人で会いたいとチャットをする。


 場所は一斗のマンションということにした。


 夢奈は田端にいたのでマップで一斗の家のマップを送信した。



 チャットは4人のグループチャットを始めてみる。


 “私地図見るの苦手”夢奈


 “それなら飯田橋の駅で俺と高梨が待っているよ”来夢


 “何時くらいに来れそうかな?”一斗


 “わたしと神無月君は6時前には飯田橋に着けると思う”うるは


 “私は6時ちょっと過ぎるかも”夢奈


 “遅くなるかもしれないけどみんな時間は大丈夫?”一斗


 “俺と夢奈は何時に帰っても問題ない”来夢


 “私は涼葉にお願いするね”うるは


 うるはは裏で涼葉に一緒にいて遅くなるという電話を家に入れてもらうように頼んでいた。




 一斗のマンションの部屋に4人が集まったのは午後6時25分だった。


 部屋のドアが開くと美味しそうな匂いが漂ってくる。


 どうやら一斗は料理をしながら待っていてくれたみたいだ。


 まずはリビングのテーブルに4人で座る。


 夢奈と一斗は今一つ理解できていないようだが。



 テーブルには人数分のオムライスとトマトサラダが乗っている。


 冷める前にと食べ始める。


 「美味しいですね一斗さん」


 「部長に言われるとうれしいです」


 「ほんとにお兄ちゃんは料理上手だよね」


 「一斗さんのお嫁さんになる人はきっと幸せね」


 食べ終わり良く冷えたお茶とジュースが用意される。


 一斗はワインを飲むらしい。


 「一斗さんは引っ越しはいつにするの?」


 「あ、そうですね、来週の月曜日から出社なので今週中にはしようかと」


 「え?お兄ちゃんそうなの?私手伝うよ」


 「ああ、うるはありがとう」


 「俺も手伝いますよ一斗さん」


 「いや、業者にやってもらうんで大丈夫ですよ、お気持ちだけで」


 「次はどこに引っ越すの?」


 「ああ、吉祥寺のマンションにな、部長が見つけてくれたんだ」


 「神無月君ありがとう」


 「いえいえ、どういたしまして」



 少しの沈黙が流れた後夢奈が切り出す。


 「私を呼び出したってことは何かあるんでしょ?」


 夢奈の今日のコーデは黒のニットセーターにミニスカートだ、シルバーのチェック柄のコートはハンガーにかけてある。


 「お見合いのことだよ、夢奈」


 「それか・・・・」


 「夢奈お見合いなんて嫌でしょ?」


 「嫌に決まってるよ、知らない人だし好きでもない人なんて・・・」


 「断るには正当な理由が必要」


 「そう、来夢を好きって言っても正当な理由にはならない」


 「じゃあさ、一斗さんと恋人だったら?」



 『え?』一斗と夢奈がお互いの顔を見合わせる。

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