第61話 お見合い


 お会計は来夢が払ってくれた。


 うるはは素直にありがとうと頭をさげた。



 2人はそのまま歌舞伎町にあるネットカフェに移動する。


 ここはカップルシートがあって個室に2人並んで座れる。


 「ネカフェ来るの初めてかも!」うるはは単純に喜んでいた。


 入り口でブランケットを受け取って指定された奥の個室に入っていく。


 うるはは個室が完全防音になっていることにちょっとどきっとする。これって中で何をしてもいいってことなのかな?



 ドリンクバーを交代で取りに行く。


 来夢はホットコーヒーでうるははアイスティーを入れてきた。


 部屋は広くクローゼットまである。


 コートや帽子はハンガーにかけてクローゼットにしまう。靴も脱いで揃えて置いた。


 うるははショートパンツにニットのセーターというかなり刺激的な服装になっている。


 来夢の視線がうるはの胸や足にからむ。


 「そんな風に見られたら恥ずかしいよ」


 「高梨がかわいいからさ」


 「・・・」


 「高梨」そう言ってうるはのあごに手を当てて来夢の方を向かせるとそのままキスをする。


 「あ・・・」


 「好きなんだ、付き合ってほしい」


 「私・・・」


 「一斗さん?」


 「・・・・」


 「俺にも夢奈がいるけどさ・・・そう言えば夢奈から聞いている?」


 「?」


 「夢奈、お見合いする予定なんだ」


 「ええ!!聞いてない」


 「相手は政治家の息子さんらしい、たしか30歳って言ってたかな」


 「ええ?夢奈はそれでいいって思ってるの?」


 「もし断るならきちんとした理由が必要になる、もちろん俺が好きだからは理由にならない」


 「夢奈は絶対に嫌に決まっているよ、そんなの」


 「だけど、夢奈には付き合っている人も俺以外に好きな人もいなくて、断れる理由がないんだよ」


 「1人だけ救える人がいるんじゃない?」


 「誰?」


 「お兄ちゃん」


 「一斗さん?」


 「偽装恋人になっちゃうかもしれないけど」


 「そっかあ・・一斗さんなら・・・どうだろう」


 「神無月君から夢奈に聞いてみなよ?」


 「でも、一斗さんと夢奈が本当の恋人になっちゃったら?」


 「うーん・・・でも今は夢奈を救うことが一番かも」


 「そうだな、まずは夢奈の気持ちを確かめなきゃか」


 「うん、そうだよ」


 「ところで」


 「ん?」


 「高梨胸大きくなった?」


 「そんなこと聞かないでよ、ばか・・・」


 整った来夢の顔がうるはの顔に近づく。


 うるはは恥ずかしくて目を閉じる。


 2回目のキス


 色んな事が消えていってしまうような。体の奥から熱くなるようなキス。


 来夢の舌がうるはのくちびるを割って中に入ってくる。


 うるはは黙ってされるままだ。


 キスをしながら来夢の腕が伸びてうるはの胸をセーターの上から触る。


 うるはの体がびくっと反応する。



 その時、なんの偶然か来夢とうるは両方の端末が同時に鳴った。


 来夢には夢奈からうるはには一斗からのチャットの着信だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る