第56話 内定
「今日さ、お兄ちゃんが面接なの・・・多分大丈夫だと思うんだけど不安でさ、山ちゃんなら話し相手になってくれるかなって」
「な、なるなる、それと・・・」
「それと?」
「い、一斗さんは・・た、たぶん大丈夫」
「え?ほんと??嬉しいな」
「う、うん、き、きっと大丈夫」
「ありがと、山ちゃん」
「こ、これ、み・・みて」
「ん?」
そこに一つ一つブロックで積まれたうるはの写真の立体コピーがあった。
「えーー!!すごい!!!これってこの前写真撮って送ったやつだよね?」
「う、うん、で、でも20時間く、くらいかな」
「え?山ちゃんって芸術とか才能あるんじゃないの?」
「そ、そうかな?プロになるとか、そ、そんなの考えたことな・ない」
ブロックの数は数十万個になるだろうか、うるはが今にもまばたきをしそうなリアルさで表現されている。
山本が大きさを変化させると一つ一つのブロックが多数積み重ねられているのが分かる。
山ちゃんはゲームの中でも引きこもりなのね、となんだか違う意味でも納得していた。
10時頃にブランチを食べるからと一回ログアウトする。
おそらく面接の最中か終わった頃だろう。
1階に下りるとゆで卵と食パンが置かれていたのでトーストにして食べる。
ゲームに戻るよりも少し連絡を待ちたかった。
ゴーグル内で動画配信を検索して色々観ているとチャットが入る。来夢からだ。
“役員面接も合格だよ、お兄さんは来週からうちで働くからね、高梨”来夢
そのチャットを見た時に不意に涙がこぼれた。
お兄ちゃんが、ようやく普通の仕事で生活できる。
なんだか思っている以上に思い詰めていたようでどっと力が抜けた。
“神無月部長からチャット来てるかもしれないけど、内定もらったよ、来週から働くから”一斗
”兄をよろしくね、神無月君”うるは
まずは来夢に返信する。
“お兄ちゃん、家に来て挨拶して欲しいよ”うるは
3階に上がると
夕方目が覚めると夢奈と涼葉からもおめでとうのチャットが来ていた。
それぞれにありがとうと返事をする。
そうだ、と山ちゃんにも今朝はありがとうとチャットを飛ばしておいた。
そのうちに陸翔が帰ってきたので思い切り抱きしめて一斗が就職できたことを伝える。
「お兄ちゃん帰ってくるの?」
「帰ってはこないかなあ」
「そうなのか」
「今度会いに行こうか?」
「うん!」
一斗の就職のことを母親と父親に伝えたかった。
一斗に口止めされているわけではないが、一斗なりに報告するタイミングを考えているのではないかと思いチャットは飛ばさないでおいた。
それでもその日は一日うるはは最高に機嫌が良かった。
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