第55話 モーニングコール


 「ハク、何時?」


 “午前6時10分だよ”


 「起きれたか・・・」


 アラームよりも早く目が覚めた。


 一斗を起こすまで少し時間があるので洗面台へ行って顔を洗う。



 水道水が冷たい。


 少しはねてる髪の毛も整えて後ろで縛る。


 寝間着の上にダウンジャケットだけを羽織って家を出る。


 5分くらい歩くと社だけ残された神社がある。


 うるはと一斗が小さい時によく遊んだ場所だ。


 (神様覚えていますか?お兄ちゃんが今日面接です!いい結果が出ますように!!)


 賽銭箱さいせんばこはないが5円玉だけは置いてきた。



 部屋に戻るとちょうど6時30分だ。


 一斗に電話する。


 少しコール音が流れて一斗が出る。一斗の方はカメラをつけてくれている。


 「おはよう、お兄ちゃん」


 「おはよ、うるは」


 「あ、そのシャツ!!」


 「ああ、この前プレゼントしてくれたやつな」


 「ネクタイも?」


 「そうそう、センスいいなうるは、さすが俺の妹だ」


 「いいでしょー?」


 「うんうん」


 「ね?面接終わってから時間ある?」


 「あーごめん、ちょっと夕方からバイトなんだ」


 「そうなんだ・・・」


 「それにちゃんと合格してから会いたいから」


 「いつ分かるの?」


 「受かっていればすぐに教えてくれるかもな」


 「私、近くの神社いってお祈りしてきたからね!」


 「そうなんだ、なんかありがとうな」


 「ううん!頑張って」


 「ほい、じゃあまたチャットするよ」


 「はい、行ってらっしゃい・・・あ、ネクタイ少し曲がっているよ?」


 「あ、そうか?」画面を見ながらネクタイを直す一斗の姿が社会人という感じで色っぽかった。


 「これでどうだ?」


 「うん、大丈夫」


 「じゃあ、行ってくる」


 「はい!行ってらっしゃい」



 通話が終わってから自分もカメラつければ良かったかなどと考えたが化粧も何もしてなかったからなと思う。



 これといってやることもなかったので寝ようかとも思ったが一斗の面接のことを考えると寝付けなかった。


 来夢にチャットをしようかとも思ったが今は余計なことはしない方がいいと踏みとどまった。



 他にやることもないのでゲームの中にダイブする。


 “雷鳴帝いるー?”うらら


 “起きてるよ”雷鳴帝


 さすがに返事が速い。ニートの友人と言うのは便利なのかもしれない。



 ゲーム内を雷鳴帝の家まで歩く。


 1階まで迎えに来てくれていた。


 「おはよ、山ちゃん」


 「お、おはよ、う、うるはさん。せ、制服似合っているね」


 今日のうららのアバターは以前ガチャで当てた紺のブレザーとミニスカートの制服だった。


 スカートからは実際のうるはの足より少し細い足が出ている。


 「ありがと!」そう言ってうるはは一回転してみせる。スカートがふわっとめくれてパンツが見えそうなくらいになる。


 「お、おお」オーバーに喜ぶ山ちゃんがちょっとかわいく見えた。

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