第57話 ホアさん


 12月16日火曜日



 この日は朝からバイトだった。


 出勤途中に山本の家の方を見るが山本は部屋の中にこもっているようだ。


 お店に着くと夜勤の大学生コンビに挨拶をして更衣室に移動する。


 制服に着替えてレジに立つ。


 今日の相棒はホアさんというベトナムからの留学生だった。


 年齢は21歳ということで専門学校で日本語を勉強しているらしい。


 ベトナム人だからだろうか少し童顔に見える。



 ホアと2人だけの時はうるはが時間帯責任者だ。


 16歳のうるはには責任が重くのしかかる。


 正式にまかされているわけではないが給与明細きゅうよめいさいを見るとホアと2人シフトの時は謎手当が支給されている。



 ホアは勉強熱心だし仕事にも熱意があった。


 少しの時間を見つけては商品のラベルを読んで分からないところはうるはに質問してくる。


 うるはも色々なことに詳しいわけではないが分かる限りでホアに教えてあげる。



 朝から客足が途切れなかったのでホアと話す暇もなくレジ対応をしていたが11時くらいになるとお客さんがかなり減ってきた。


 「ホアさん、先に休憩どうぞ」


 「いいの?うるちゃん?」


 「いいよー」


 ありがとうと言いながらホアは休憩室に入っていく。



 日本に住むにも働くにも勉強しなければいけないとのことだった。


 生まれつきの日本人であるうるはには在留資格と言われてもピンとこない。


 バイト代もほとんど実家に送っているらしい。


 ホアが言うにはコンビニでアルバイトするには日本語能力が高くないといけないので他の外国人からは羨望せんぼうのまなざしなのだとか。


 うるはは賞味期限が切れそうなお弁当やお惣菜そうざいなどをなるべく持って帰らせてあげるようにしていた。



 お昼頃からまた忙しくなりそのままシフトが終わる夕方の5時まで客足は途絶とだえずに忙しかった。


 終わってから振り返ると今日は山ちゃん来なかったなと思った。


 どうやら約束はきちんと守るらしい。



 シフト終了間際に涼葉がコンビニに来た。


 「涼葉ー」


 「うるはー」


 とハイタッチをする。


 シフト終了とともに2人でうるはの家に行く。




 「涼ちゃん!」うるはの家に着くと陸翔がはしゃいで涼葉にまとわりつく。


 「陸ちゃん!」涼葉もそれに答えて陸翔を抱きしめる。


 3人でうるはの部屋に入る。


 涼葉はコンビニでスナック菓子を5つくらい購入していたが、うるははこの間電話で山本対応してくれたお礼も込めて涼葉のためにはちょっと高いアイスを買ってきた。陸翔と自分用の物は安いやつだがこれはこれで美味しかった。


 「うるは、気にしなくていいのに?」そう言いながらも高級アイスを食べる。


 「いいのいいの、気持ちだから、それよりお菓子こんなにありがとうね」とパーティー開けしてテーブルに広げる。


 「あのあと山本とどうなの?」


 「あー山ちゃんとは仲良くしてるよ!」


 「山ちゃん!?」


 「うんーゲーム内でよく遊んでいるよ」


 「どうりで最近返事が遅い時があると思ったら」


 「ゲームしてても涼葉とかからのチャットはすぐに返してるよ」


 「そうかなあ??」


 「そうだよ!」


 陸翔はうるはと涼葉の会話の内容が分からなくてうなづきながらお菓子を食べていた。

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