第50話 ナイト
送信するまでに手が震えたがどうにか送信した。
5分ほど経ってから返信がある
“うるはさん?”雷鳴帝
“はい”うらら
しばらく沈黙がある。山本もうるはから連絡があるとは思っていなかったようだ。
“どうしたの?”雷鳴帝
“山本亀黄さんですよね?”うらら
“ああ”雷鳴帝
“部屋から私の方を監視するのやめてください、あと、お店にももう来ないでください、私のシフトの時は”うらら
“・・・・・”雷鳴帝
“それと兄とのことも人には言って欲しくないです”うらら
”・・・・”雷鳴帝
”その代わり、ゲーム内でお友達になりませんか?うららと”うらら
“え・・・いいの?”雷鳴帝
“はい、その代わりリアルでは一切関わらないでください”うらら
“ああ、分かった、約束するよ”雷鳴帝
これで少しほっとした。
“友達だったら俺の家に来て欲しいな”雷鳴帝
“あ・・そうですね、いいですよ”うらら
ゲーム内とはいえ山本の家に行くのは怖かったが強制ログアウトを含めて手段は色々あると思った、それに現実の体が汚される危険もない。
山本の家に行くと鍵はかかっていなかった、実際の家と見分けがつかないほどリアルな玄関から中に入る。
「お邪魔します」音声で伝える。
「よ、ようこそ、う、うららさん」
リビングには雷鳴帝こと山本が立っていた。
山本家にはほかにプレイヤーはいないようで黄亀が家を独占していた。
「へ、部屋に、き、きなよ」
「はい」
雷鳴帝は20代のように見えるアバターだ、髪の毛は黒に赤のメッシュが入っている。体型もやせ型で身長は175センチくらいだろうか。
雷鳴帝の見た目だけで現実の山本よりは少し抵抗感が薄れる。
部屋に入ると壁や天井が全てリアルのうるはの写真で埋め尽くされていた。
何歳くらいなのだろう?多分保育園に入った頃のものまである。
おもむろに山本から画像が送られてくる。
びくっとする。
もしかして自分の変態な画像か?
そう思って開封すると山本の右腕にある大きな傷跡の写真だった。
「大丈夫なんですか?」
「う、うららさんが小学校2年生の6月2日に佐藤さんの家の犬にお、襲われたとき、た、助けたやつ」
「え!!!」
そう思い出した。
雨の日に1人遊びをしていて敷地内に入ってしまい大型犬に襲い掛かられたこと。
殺されるかと思った。
そして、誰かがかばってくれて血がたくさん流れてうるははそれを見て気を失ってしまった。
そして、車にひかれそうになったときや夜道で変な男に車に乗せられそうになった時も近くにいたおじさんが助けてくれていた。
そのおじさんは誰に自慢するわけでも、うるはの親に報告するでもなくすぐにその場を立ち去っていた。
それが
「山本さん・・・・私・・・今まで・・・・ごめんなさい・・・全部、忘れてたの・・・・」
「い、いや、あ、あたりまえのことを、し、しただけ、う、うるはさん、そろそろそういう時期だから、ひ、避妊のこととかもつたえた・・かった」
「うん・・・・」
「よ、よけいな、ことかもしれないけど・・」
「ううん・・・私のナイト様だよ」
「な、ないと、ちがう、から」
うるはは山本のアバターにギュッと抱きついた。
「ありがとう、山本さん」
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