第48話 作戦会議


 バイトはその後いつも通りだったが山本の言葉が思い出される。


 見られていた。


 多分画像にも残っているだろう。


 もちろんそれを拡散かくさんなどすれば大事になることくらいは分かっているだろうが。


 山本のことばかり気になり機械的に手足を動かしてバイトを終えるとすぐに涼葉の家に行く。



 「いらっしゃいうるはちゃん」涼葉のお母さんが出迎えてくれる。


 ペコリとお辞儀をして挨拶をしていると涼葉が2階から下りてきた。


 一緒に涼葉の部屋に向かう。



 部屋に着くと151センチと小柄こがらな涼葉に抱き着く。


 「どうした?うるは」


 「どうしよう?私」


 「何があったか話してごらん」


 「お兄ちゃんのマンションに行った」


 「それで?」


 「キスした」


 「キスだけ?」


 「うーん・・・ディープなキスだけ」


 「一斗さんとねえ」


 「照れるでしょ」


 「やることやってるのね」そう言ってうるはの体をくすぐる。


 「やだ、まだ話あるの」


 「それで?」


 「家の前でキスしてたの山本に見られた、多分録画とかされてる」


 「そっかあ」


 「ばらまかれたりしたらどうしよう?」


 「そこまではしないと思うけど・・・」


 「うん・・・」


 「後は?」


 「神無月君とのこと・・・」


 「来夢君ね」


 「お兄ちゃんがいるし、神無月君には夢奈がいるし、でも兄妹とか姉弟よりは普通のカップルのほうがお互いにいいのかなって」


 「それは理性かもしれないけど、気持ちは別なんじゃないの?」


 「わかんない」


 「そう?」言って涼葉はうるはを押し倒す。うるはの身長は155センチと涼葉よりも高いのだがいつも涼葉にされるがままになっている気がする。



 「だめだよ・・涼葉」


 「キスだけ」


 「ん」


 うるはのやわらかいくちびると涼葉のやわらかいくちびるが触れ合うくらいのキスをする。




 「山本とゲーム内で接触してみたら?」そう涼葉が提案してくれた。


 「ゲーム内かあ」


 「そこなら物理的な危険はないでしょ?」


 「うーん、でも何を言うの?」


 「そうだなあ・・・リアルで監視するのをやめてくれたらゲーム内でフレンドになりますっていうのは?」


 「フレンドかあ・・・・」


 「多分それくらいしないと止まらないかも」


 「たしかにね、それにゲーム内だったら大丈夫かなあ」実物の山本にこれ以上付きまとわれたらバイトを辞めるしかないかもしれない。



 7時には涼葉の家を出て自宅に戻る。


 その間も山本の家の方を望遠で見るが山本はうるはを監視しているようであった。

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