第41話 気持ち


 部屋を真っ暗にして泣いていると玄関が開く音がする。


 「お邪魔します」うるはの声だ。



 しばらくすると部屋のドアが開いて光が入ってくる。


 「夢奈、高梨がおでん買ってきてくれたよ、みんなで食べようぜ」


 「なんでここに来るの?」


 「なんでって言われてもなあ」ウルフカットの髪をぼりぼりとかいてうるはの方を見る。


 「夢奈、一緒に食べよ!」


 うるはの明るい声にひかれて夢奈も部屋から出てリビングへ向かう。



 おでんは3人で食べるには多すぎるほど買われていた。


 まだ熱いおでんをはふはふしながら3人で食べる。


 「美味しいね」夢奈の目からはさっきと違う意味の涙がこぼれていた。


 うるはが夢奈をぎゅっとだきしめる。


 「うるは?」


 「ん?」


 「胸大きくなったよね?」


 「え・・多分?」


 「だからかあ・・・」


 「だからって何?」


 「その胸でうちの来夢とかを引き寄せているんでしょー」


 「えー胸だったら夢奈もたしか私より大きかったよね」


 「ん-なんか変わらなくなった気がする」


 「そうかな?」


 夢奈とうるはが少し笑ってそれにつられて来夢も笑う。





 その後うるはと来夢で一斗の話をした。


 来週に役員面接があるがおそらく就職は問題ないとのことだった。


 また、一斗は刺された件については大事にするつもりはなかったらしいが、来夢の会社の顧問弁護士こもんべんごしが動いてくれてホストクラブ経営者に管理責任かんりせきにんを追及して慰謝料いしゃりょう請求せいきゅうできるだろうというところまでになっているとのことだ。


 来夢が一斗のために色々と動いてくれているのが嬉しかった。


 話をしていると同級生とは思えないほど色々なことを知っている。さすが部長と言ったところか。


 夢奈は来夢の隣に座ってこくこくとうなづいている。



 その後3人で来夢の部屋にある大画面モニターで映画を観た。


 ちょうどハクと観た恋愛映画だった。


 ラストシーンを観たかったのだが9時になってしまったのでうるはは帰ることにした。




 来夢と夢奈が田端駅まで送ってくれる。


 駅の改札について来夢と夢奈を見ると本当に一緒にいるのがぴったりに思える。


 うるはは心が少しズキンというような痛みが走った。


 (・・・恋なのかな?)




 駅からの帰り道山本の家の前を通ると、またこちらを見ている。


 なるべく早足で前を通過する。


 家に着いたのは夜10時前だった。


 母親には連絡を入れていたものの「遅い」と叱られる。


 「食べてきたから」そう言ってお風呂に入る。


 陸翔はもう母親と一緒に入ったらしい。



 体を洗いながら来夢のことを考える。


 イケメン・部長・おしゃれもしてる・兄のことも良く考えてくれている・・・・


 完璧だよねと思う。


 一斗のことを考える。


 半分血のつながった兄・かっこいい・何をするか分からないところがある・優しい・高身長・ファーストキスの相手・・・


 お兄ちゃんか・・・・・・。


 顔が赤くなる。


 分かんないや・・・。



 うるはは浴槽に浸かりながら息を吐きぶくぶくと泡立てて消える泡を観察していた。

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