第34話 4人の食卓


 ところで、とうるはは考えていた。


 一斗からもらった100万円の使い道だ。


 ホスト辞めちゃったのでお金に困っているだろうと返すと伝えたのだが、困っていないし今まで何もできなかったのだからせめて受け取ってくれとのことだった。


 半分は陸翔のために使ってはいけないだろうと封筒も別の物に50万円を入れてある。


 50万円あったら有料ガチャが何回引けるだろう・・・・もしかして当たりが引けたら倍になるかも・・とは考えたものの、1つはハクに激怒されるであろうこと、もう1つは一斗が一生懸命に貯めたであろうお金なことを考えてやっぱり手を付けないでおいた。


 お金はいつか何かの役に立つかもしれない。



 夕飯まで時間があるのでうるははペン型コントローラーを使ってVR内で絵を描いていた。


 うるはが描く絵は本格的だ。


 幻想的な風景をよく描いている。


 ハクは本当に感心したように絵をほめるからうるはも喜んで描き進める。


 今描いているのは湖のほとりに少女が座っている構図だ。


 色はまだ入れていない。


 うるはは繊細せんさいなタッチで下書きを仕上げていく。




 夜の7時半になると陸翔が呼びに来た。


 VRの世界に入り込んでいたうるはが現実世界に呼び戻される。


 1階に降りると母親がキッチンに立って料理をしているようだった。


 今日は野菜炒めと言ったところか。



 うるはと陸翔はお風呂に入る。


 今日は脱衣場から一緒だ。


 なんだか陸翔の視線が胸に来ている。


 「なーに?」


 「大きくなったよね?」


 「え?やっぱりそうかなあ?」


 「うん」陸翔は恥ずかしそうに目をそらしてお風呂に先に入る。


 うるはは何となく腕で胸を持ち上げてみたりする。


 重さは変わっていない?か。



 

 お風呂を出ると食卓に夕ご飯が並んでいた。


 陸翔とうるはが食卓について食べようとすると母親が少し待つように言う。


 「待っている間これでも食べて」そう言ってプチトマトとお茶を出す。


 陸翔が5つくらいのプチトマトを一気に口に入れてうるはに見せた。


 「バカ」


 陸翔の口からトマト汁が大量にこぼれて母親が叱る。なぜかうるはまで巻き込まれて怒られてしまった。



 そんなことをしているうちに玄関が開く。


 「ただいま」父親の声だ。


 「おかえりー」真っ先に陸翔が玄関まで迎えに行く。


 父親は陸翔の頭が自分の頭の上になるくらいまで持ち上げる。


 「大きくなったんじゃないか?」


 「この前の身体測定で5㎝伸びてたよ!」


 「おお、そうか、いつかパパも抜くな」


 「かなあ」



 父親が帰ってきたところで4人そろっての食事となった。


 土日にうるはがいなかったこともあって久しぶりにそろった。


 父親は年頃のうるはにどう接したらいいのか分かっていないようなところがあって「元気か?」などと声をかけていた。


 父親が早く帰ってきた時だけは母親も一緒にビールを飲んだ。


 父親と母親の肉野菜炒めは唐辛子とうがらしでピリ辛となっている。


 陸翔が学校の話をしてそれを3人で聞いてあげるようなそんな食卓だった。

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