第32話 嵐の前の・・・


 12月8日火曜日



 この日は朝からコンビニでバイトが入っていた。


 一緒に寝ていた陸翔の方が先に起きて準備をしているようだ。


 父親は朝早く出勤しており、母親はキッチンで朝ごはんの準備をしてくれている。



 「おはよう」キッチンに降りていき母親と陸翔に声をかける。


 ピザトーストとサラダが食卓に並べられていた。


 うるははピザトーストが大好きなので朝からテンションが上がる。


 「じゃあ行ってくるわね」母親は時計を見ながら家を出る。



 残されたうるはと陸翔は黙々と食事をする。


 陸翔のバッグはもうリビングの椅子に置かれておりすぐに出ていけるようになっている。 陸翔の口元についたケチャップをうるはが拭いてあげると陸翔は何やら恥ずかしがっていた。


 「行ってくるねおねーちゃん!」陸翔は元気に出ていく。




 バイト先までは数分のため、まだ30分くらいは準備ができる。


 うるはは3階の自室に戻り鏡の前で軽く化粧をする。


 化粧が終わるとジーンズにパーカーとダウンジャケットというラフな格好かっこうでバイト先に向かう。


 シフト開始の15分前にはお店に着き早番の店員に挨拶をして、女子更衣室で制服に着替える。


 お店の制服は上着のみ着替えれば良いのでダウンジャケットとパーカーを脱いで少し蛍光色の入った明るい制服を身につける。


 なんだか最近胸の辺りがきつくなってきた気がする。大きくなってるのだろうか?


 制服の管理をしてるのはオーナー店長だが男性なのでサイズのことは少しだけ言いづらい、それに今は店長出勤前の時間だ。とりあえずは今のままでいいかなと鏡の前で制服を整える。


 うるはの胸の成長によって少しピチピチとなった制服でお店に出ることになった。


 ベアを組むのは慣れたおばさんだった。 おばさんはうるはの制服を見ても何も言わなかった。


 多分気にしすぎかな、と思ってうるははレジに立つ。


 

 2024年のコンビニはまだ完全無人とはなっておらず店員が必要だった。


 それでも、商品の品だしやお会計など至る所に自動化の波は押し寄せてきている。


 効率だけを考えれば店員は1人でも良さそうだが防犯上も1人は危ないということなのだろうか、必ず2人ペアで勤務をしている。




 午前中はいつもと同じようにうるははバイトをこなしていく。


 常連のおじいちゃんやおばあちゃんなどに話しかけられてそれに対してもうるはは愛想が良かった。


 みんながうちの孫の嫁になどとうるはに声をかける。


 うるはは笑って「ご縁があれば!」と答えていた。




 何事もなく過ぎていきそうな日だった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る