第29話 帰宅


 朝9時になりうるはと来夢は兄の部屋から出る。


 夜の厳しい寒さがとりあえずは収まっている。


 飯田橋から総武線に乗り秋葉原に行き、そこで京浜東北線に乗り換えて田端に戻る。


 神無月家に戻ると夢奈が出迎えてくれた。涼葉は学校のために早朝家に戻ったとのことだった。


 「良かったね、うるは」そう言って夢奈が抱きついてくる。


 「ありがと」うるはもそれに応じる。


 「もしかして夢奈も重役だったりするの?」


 「え?わたし??私は何もしてないよ、来夢は毎月すごい給料なんだよねーこのまま一生養ってもらうつもりなんだけど」


 「そうなんだ」なんだかうるははほっとした。


 1日で出たごみなどをうるはがゴミ袋にまとめている。


 「そんなのあとでやるよ」


 「ううん、せめてこれくらいはしないとさ」


 3人で分担してごみの片づけをする。


 

 「これ準備してたんだ」


 そう言って夢奈がエナジードリンクの新作を冷蔵庫から取り出してくる。


 「お兄さんとの再開を祝して」夢奈の掛け声で乾杯する。


 飲み終えると来夢が会社に行くと言い始めた。


 夢奈がスーツやネクタイを準備する。


 「ありがとう」と言いながらそれを受け取って身に着けていく。


 来夢はスーツ姿も決まっていた。


 おそらくオーダーメイドの物なのだろう体型にも合っている。


 ウルフカットのイケメン高校生が不動産会社の部長、王子様としてはこれ以上はないのかと思える。


 会社は新宿駅西口の高層ビルの一角にあるそうだ。



 うるはは来夢と一緒に途中まで山手線に乗って巣鴨駅で別れる。


 西巣鴨駅から数分歩いて自宅にたどり着く。


 なんだか久しぶりに帰った気がする。


 「ただいまー」誰もいないのが分かっていながら声を出して玄関を開ける。


 「誰もいないね、ハク」


 ”そうですね、うるは”


 「なんか冷たい?」


 ”そんなことないよ”


 「あー・・いろいろとやきもち?」


 ”やくよ”


 「ごめんーまたアバター買ってあげるから」


 ”そんなのでは僕の機嫌はよくならないよ”



 一度部屋に戻って着替えを取ってくるとお風呂に入る。


 大きな浴槽に入るのも久しぶりの気がする。


 お風呂を出るとドライヤーで髪の毛を乾かして部屋着に着替える。


 リビングのテーブルにおにぎりと漬物が置いてあるのでそれを食べてから部屋に戻る。

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