第24話 キス


 山手線のホームに電車が入ってくる。


 車内に入ると少しほっとする暖かさだ。


 高校一年生の2人が歩いているところを補導されないかかなりドキドキする状況である。


 それでもうるははそんなことは全く気にしていないようにゴーグル内に示される情報を両手に持ったペン型コントローラーで操作している。


 

 前もって調べたところによると池袋にあるホストクラブは10軒


 西口の一斗が歩いて行った方向にはそのうちの8軒がある。


 救いはそれがかなり近い位置に密集していることだ。


 帰りの時間は分からないがお店の外に出るタイミングで捕まえられるかもしれない。


 残った涼葉と夢奈からは何もチャットが来ない。おそらくは目ぼしい情報がないのだろう。


 

 電車は池袋駅に着く。


 時刻は午後11時30分


 

 池袋は大きな駅だ。


 JR線の他に東武線や西武線なども乗り入れている。


 

 2人は駅のホームからコンコースに降りて西口方面へ向かう。


 途中酔っぱらいを警察官が囲んでいてうるはと来夢まで補導されるのではと思ったが、どうやら酔っぱらいの相手だけで手一杯のようでうるはたちのほうに職務質問しょくむしつもんをするようなことはなかった。



 池袋駅西口から外に出ると12月の深夜の寒さが2人を襲う。


 あれだけ着込んだのにうるはは震えるほど寒く感じる。


 この時間ならまだ電車が動いているので一斗も駅から帰るはずだ。


 西口の駅前で待ち構える。


 カップルをよそおったほうが自然だと来夢が提案するので壁際にうるはが立ちそれを来夢が抱きしめる形で立っている。


 

 「高梨」


 「ん?何?」


 「柔らかいな・・高梨の体」


 「え?そんな恥ずかしいよ」


 「くちびるもさ、かわいいなって」


 「え?」


 その瞬間来夢の口がうるはの口をふさぐ。


 (!!!!!)


 来夢の舌がうるはのくちびるを割って侵入しようとしてくる。


 うるはは少し抵抗しようとしたがくちびるを開けて迎え入れる。


 ゴーグルが邪魔になるはずだが来夢は器用にそれを避けてキスをする。


 濃厚なキスがしばらく続いた。


 「高梨と付き合いたい」


 「・・・お兄ちゃんが・・・」


 「俺はずっと高梨を待っていてもいい」


 「うん・・・ごめん、まだ考えさせて」


 そう言って来夢の体にしがみつく。

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