第21話 眠れぬ夜


 脱衣場が渋滞になるのでうるはと涼葉は髪の毛も自然乾燥にするつもりで部屋に戻ってきた。


 パソコンの置いてある机に涼葉が座ってうるはは床に座る。パジャマは夢奈が貸してくれた。


 少しすると来夢と夢奈が部屋に戻ってきて合流する。



 涼葉からこの後の説明になる。


 とりあえずの作業は終わっていること、この部屋をベースに一斗捜索を続けたいこと、そしてうるはは必ず睡眠を6時間は取ること。


 お風呂に入っている間もミーティングの間もパソコンは識別作業をしてくれてハクは二次識別を行ってくれている。


 時間を見ると3時45分


 今日は日曜日ということもあり4人とも時間はある。


 うるはのゴーグルを1人は着けて残りの3人は寝ようということになった。


 パソコンは起動したままメインモニターもサブモニターも電源を落とす。


 暗い部屋にはうるはのゴーグルの灯りだけになった。



 うるはは朝までは寝ないと言い張るので残りの3人が眠ることにした。


 来夢と夢奈と涼葉という順番に川の字になってダブルベッドに入る。


 涼葉は男の子と一緒のベッドで寝るということに少し緊張していたが一日の疲れの方がまさってすぐに眠りに落ちた。


 来夢と夢奈はそれも当たり前なのか2人でお互いをぎゅっと抱きしめて眠りにつく。


 まるでパズルピースの隣同士のように絵になっている。



 うるはは椅子に座ってゴーグル内の映像をじっと見ている。


 (お兄ちゃん・・・)


 そう思いながらくちびるを指でなぞっていた。




 「おはよう」涼葉がまず起きた。


 「ん、おはよ」


 「何時?」


 「8時55分」


 「え?もうそんな時間」


 「うん」


 「トイレ行ってくる」


 「行ってらっしゃい」


 

 部屋は微風のエアコンが効いているが部屋の外に出ると12月の空気が冷たい。


 涼葉は早足でトイレまで行き戻ってくる。


 「おかえり」


 「じゃあ交代ね」


 「うーん」


 「繁華街に9時に歩いてたりはしないでしょ?」


 「分からないじゃん」


 「その時は必ず起こすから」


 「ん・・・」うるははしぶしぶゴーグルを渡す。



 

 来夢と夢奈はくっついたまま離れなくなったように寝返りも打たずに大人しく寝ている。


 「なんだかこの双子はちっちゃな子どもみたいに思えるね」


 うるはがそう言うと涼葉も軽く笑った。

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