第19話 モニタリング作戦(3)


 門の中に入ると母屋おもやとは別に来夢と夢奈だけの離れの家が建っている。


 離れの家だけでも普通の戸建て住宅くらいの大きさがあり、キッチンやお風呂トイレなども揃っている。


 「どうぞ」来夢がドアを開けてうるはと涼葉を中に入れる。


 どうやら高性能パソコンは来夢の部屋にあるらしい。


 4人は来夢の部屋に入る。


 大きな出窓が特徴的な作りとなっている。


 片方の壁に大きなダブルベッドが置いてあり、反対側の壁の方にパソコンと勉強机がある。


 揃ったところでまずはうるはが来夢と夢奈に頭を下げる。


 「いきなり、ほんとにごめんなさい、そしてありがとう」


 「メールであらかじめ伝えた通りなんだけど、私じゃ何もできなくて、みんなの力を貸してほしくって」


 「高梨、大丈夫だよ俺にできることならなんでもするよ」


 「そうだようるは、お兄さんが大変なんだからさ」


 技術的な説明は涼葉がしてくれる。


 まずは都内の公開されているカメラ画像を同時にパソコンで視聴可能な状態にする。


 そして、その中から身長や体格が一斗と似ている人を拾いだす。


 拾いだした映像をさらにうるはのゴーグルに送信してハクが二次識別をしてうるはに伝える。


 一斗は怪我をしているようだし、一刻も早く見つけ出したい。


 何時間かかるか分からないがこの作業をこの4人で手分けして行う。


 「鈴木さんってもしかして天才プログラマーか天才ハッカーか何か?」来夢が説明を受けながらびっくりしている。


 「私はプログラムはできないけど、このタブレットにプログラムを自動生成するアプリが入っているからやれるはず」涼葉が持ってきたタブレットをバックから取り出す。


 既に起動しているパソコンにタブレットを接続する。


 神無月家のパソコンは100インチモニターが2台ありこの作業にはまさにうってつけだ。



 まずは池袋の映像からパソコンに取り込む。


 明るい


 何百人の人が映っているのだろうか。


 まずはその映像をリアルタイムに処理してみる。


 映っている数百人の人がそれぞれ緑色の枠で囲われ分析が始まる。


 何人かの枠が青色に切り替わりサブモニターに映し出される、これはうるはのゴーグルにも飛ばされている映像だ。


 身長や体格が似ている人をピックアップしている。


 ハクの二次識別とは別に人の目でも確認できるようになっている。


 ハクの二次識別まで通過すればうるはがじかに本人かどうかの識別を行う。



 テスト段階の1画面からすでにうるはは画面に釘付けになっていた。


 お兄ちゃんが見つかるかもしれない。


 うるはには大画面モニターに選別された青枠の識別をしてもらって、その間に涼葉と来夢が手分けをして東京の路上カメラの映像を追加していく。


 池袋だけでも5か所


 新宿7か所


 渋谷9か所


 六本木7か所


 といった具合にどんどんと追加されていく。


 どれだけの画像を同時処理できるのかと思ったが神無月家にある高性能パソコンは悲鳴を上げることなく与えられたタスクをこなしていく。


 青枠の数も膨大になっていく。


 それでもうるはは必死に画面をみていた。


 夢奈もうるはから一斗の画像を見せてもらって一緒に一斗を探し始める。



 「かっこいいね、お兄さん」


 夢奈に話しかけられてもうるはは少しうなずくだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る