第17話 モニタリング作戦


 夕方の4時45分くらいには遅番の店員が来てくれて5時丁度にはバイトから解放された。


 すぐに涼葉の家に向かう。


 バイト先のコンビニから歩いても数分だ。


 冬の滝野川を駆け出すくらいの勢いで涼葉の家に向かう。



 1階のインターホンを鳴らすとすぐに涼葉が出てきてくれた。


 「どした?うるは」


 その声が優しかった。


 「涼葉・・・」そう言って涼葉に抱きつくとうるはは大泣きする。


 「どちた?うるは」涼葉はうるはの長い髪の毛をなでてあげる。


 涼葉の手に引かれて2階の涼葉の部屋に導かれる。




 涼葉の部屋のテーブルにはうるはが好きな銘柄めいがらのペットボトルのお茶が置かれていた。うるはのことを待っていてくれたのだろう。


 「お兄ちゃんが・・・」


 「お兄ちゃんって一斗さん?」


 「昨日会ったの、怪我してた」


 「うん」


 「危ないことしてるんじゃないかな・・・わかんないけど」


 「そっかあ」


 「お兄ちゃんとまた会って、戻ってきて欲しい、うちに・・そうじゃなきゃお兄ちゃん死んじゃうんじゃないかなって」


 「うん・・・」


 「でも、お兄ちゃんの居場所の手がかりはないし、私だけで人探しみたいなことしても多分大変なことになるかなって・・・」


 「うん・・・一斗さんの周囲の人は多分普通の生活してないよね」


 「でも、あきらめたくなくて、それにお兄ちゃんのこと知ってる人ってもう涼葉くらいしか連絡取ってないから」


 「そうね・・・」


 「何かいい考えがないかな?」


 「多分・・あるかも」


 「え?本当に?」


 「とりあえず一斗さんと会えればいいのでしょ?」


 「うん・・そうだけど、お兄ちゃんの電話番号もチャットのアドレスも分からないから、どこにいるのかも」


 「ちょっと見てて」


 そう言うと涼葉はタブレットを取り出してなにやら検索けんさくを始める。


 「これこれ」


 そう言ってうるはに見せたのは池袋の夜景だった。


 「ん?夜景??」


 「都内の色んな場所に設置されているカメラの映像がリアルタイムでネット配信されていてその映像を処理すれば多分一斗さんが映っている画像があるんじゃないかな?」


 「え??涼葉・・・頭いいと思ってたけど天才???」


 「天才とかじゃないよ、それよりもこれをやるのはこんなタブレットじゃだめなんだ、うるはの知り合いで誰か高性能パソコン持っている人いないかな?」


 「パソコンかあ・・・あ!」


 「いるの?」


 「この前話していた神無月姉弟のところにたしかすごいのあるって聞いたことある」


 「緊急事態だし頼れそう?」


 「お願いしてみる」

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