第16話 一斗を追って
お風呂に入りながら兄の事を相談できる人を考えたが
高校のクラスメイトは兄がいることすら知らないだろう。
そしてやっぱりハクが頼りになると思った。
お風呂から出て自分の部屋に戻るとゴーグルを着けてハクを呼び出す。
「ハク」
”うるは?”
「ごめんね、なんだか私」
”そんなに腫れた目で謝られたら許さない人はいないよ、僕がAIだとしてもね”
「お兄ちゃんを探して連れ戻したいの、協力してくれる?」
”もちろん協力するけど簡単なことじゃないよ?うるはに危険が及ぶ可能性も高くて
「でも、決めたの!それで私がどうなっちゃってもいいんだ」
”それじゃミイラ取りがミイラになっちゃうよ”
「それくらいの覚悟があるってこと」
”うん、僕は協力するけど自発的に緊急通報することもあるからね”
「うん、、その時はお願い」
時間は5時を回っていた。
コンビニのバイトは8時から夕方の5時までだ。
2時間は眠れると計算してベッドに入る。
バイト先のコンビニはうるはの家から徒歩で5分ほどの距離にある。
バイト先に着く前に涼葉に”夕方話したいことがある”とチャットを打つとすぐに”OK”と返事が来た。
8時台は通勤や通学のお客さんが多く兄のことを考える暇もなく時間が過ぎる。
10時頃になってようやく客足が途絶えた。
うるはは
「うるはちゃん頑張ってるね」パートの主婦からも評判がいい。
今日のパートの女性はうるはの中学の2個下の後輩のお母さんだ。
「うちの子もうるはちゃんみたいに気が利く子だったらいいのにね」などと言ってくれる。
そんなパートのおばさんの言葉も上の空で時間が早く流れて欲しいと願う。
しかし、時間はそんな時に限ってゆっくりと流れるように感じられる。
もっと忙しければいいのにと思ったりもする。
バイト中はゴーグルもロッカーに置いているので休憩時間にしか見れない。
「15分休憩しておいで」おばちゃんの言葉に甘えてロッカーに入る。
ゴーグルをかけてイヤホンをする。
ハクが”高梨一斗”で様々な検索をかけている。
小学校の運動会の写真などが出てきた。
懐かしい
運動神経は抜群に良かった。
それでも現在の一斗の居場所を特定するような情報はさすがに見つけられなかった。
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