第14話 封筒
18時過ぎになると一斗は目を覚ました。
うるはと陸翔はずっと見守ってくれていたようだ。
「うるは、なんだか女の子になったなあ」
「もう高校生だからね」
「陸翔も大きくなったな」
「うん!」
「これ渡しておく」そう言って
封筒には1万円札の束だ。おそらく百万円くらいあるだろう。
「え?受け取れないよこんな大金」
「いいんだよ、受け取っておいてくれ、陸翔はもう少し大きくなったらうるはから分けてあげて」
「お兄ちゃん」
「母さんが帰ってくる前には出ていかなきゃな」
「ママもパパも怒ってないよ?」
「いいんだ、迷惑かけられない」
「ねえ、普通に暮らせないの?また前みたいにさ家族で、私お兄ちゃんのためならなんでもするよ?ママやパパに土下座してもいいし、部屋だってここをお兄ちゃんの部屋にして私はママたちと同じ部屋でもいいし」
一斗は少し考える仕草を見せる。
「ありがとうな、まあ今はやらないといけないことあるからさ、いつかお世話になるかもな」
「嘘、お兄ちゃんはもう帰ってこないんじゃないの?だからお金を渡してくれたんじゃないの?」
「うるは、いい女になれよ」そう言って優しくうるはを抱きしめる。
うるはも一斗の体を強く抱きしめる。
うるはと離れて陸翔の頭をポンポンと叩く。
「うるはを頼むぞ、陸翔君」
「うん!!」
一斗もまたゴーグル型の端末を使っていた。
それで仲間を呼ぶ。
30分くらいで近くの公園まで迎えに来てくれるとのことだった。
「玄関まででいい」
一斗はそう強く言うとリビングに2人を残して少し足を引きずりながら出ていった。
うるはは涙が止まらなかった。
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