第12話 ファーストキス
うるはの家はうるはの顔くらいまでの植え込みがあり外から中が見えないようになっている。
門はなく敷地に入るとすぐに玄関がある。
”止まって”
うるはが寒い寒いと言いながら自宅の敷地内に入ろうとするとハクからそんな声がした。
「え?」
”様子がおかしい”
よく見てみると植え込みに一部黒く変色している所がある・・・血痕か?
「誰かいるのか?」ハクのこれまで聞いたことのないような声が外部スピーカーから発信される。
「・・・」
人の息遣いが聞こえる。
110番通報するべきだろうか。
ハクは緊急通報スタンバイモードになっている。
うるはが敷地の中に入って植え込みの中を覗く。
(・・・え?イケメン!?)
【氏名不明 男性 年齢不詳(推定21歳) 身長183㎝】
そう表示された男は植え込みの陰でわき腹を抑えながら青い顔をしていた。
髪型はショートで髪の毛がツンツンと立っている。髪の毛の色は青緑色をしている。
ハクが緊急通報の発信をしようとしたその時に
「待って、ハク」
”うるは?”
「お兄ちゃんだよね?」
「覚えていてくれたのか」
「覚えてるよ、
「ああ・・・」その返事で意識を失う。
その後うるはは一斗をどうにか家の中まで運ぶ。
3階まで持ち上げることは無理なのでまずはお風呂に運び着ている服を脱がせて傷口付近を濡れたタオルで拭いてあげる。
1階の暖房はハクが一番暖かい温度まで設定して運転してくれている。
一斗はうるはの6歳上のはずだから今は22歳か。
服を脱がした時に鍛えられた体にかなりドキドキした。
どうやら一斗の傷は大したことはなく栄養不良が原因らしい。
キッチンを見るとレトルトのおかゆがあったのでレンジで温める。
どうやらぼんやりと意識は戻っているようだが言葉になっていない。
一斗は5年前になるのか、お父さんと大喧嘩して家を出ていった。
当時から悪い仲間と一緒にいることは多かったがうるはや陸翔にはすごく優しかった。
おかゆを作ってお椀に入れてスプーンで食べさせようとしても一斗はうまく飲み込めないようだ。
お兄ちゃんのためだよね。
うるはは決心しておかゆを自分の口に含む。
そして一斗のくちびるに自分のくちびるを重ねるとおかゆを一斗の喉に流し込むように入れてあげる。
一斗の喉をおかゆが通っていく。
何回も繰り返しキスをしておかゆを流し込む。
なんだか顔に赤みが戻ってきたように思える。
最後はお水も飲ませてあげて食事を終える。
しばらくすると陸翔が帰ってきた。
「兄ちゃん!!」まるで野球のスーパースターがひょっこり家に現れたような驚きである。
「おう陸翔」ようやく声が出るようになった。
「お兄ちゃん運ぶの手伝って」
「うん」
うるはが肩を貸して階段を上り、陸翔は一斗の靴を持ってきて後ろから支えている。
うるはは兄を支えながらもその筋肉質の体にどきどきしていた。
(キスしちゃった・・・・)
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