第6話 鈴木涼葉
午後の授業が終わると結愛はサッカーの練習があると言って真っすぐに埼玉に帰っていった。
神無月姉弟に捕まらないうちにとうるははバス停へと向かう。
帰りのバスは登校時とは打って変わって空いていた。
それでも声を出してハクと会話することはできず両手に持ったコントローラーでハクと会話する。
”どう思う?ハク”
”どうって?”
”来夢だよお”
”来夢君ですか・・・”難しい顔をする。
ゴーグルの中にはまるで同じバスに乗っているかのようにハクが映し出される。
ハクの設定は、年齢18歳 身長177㎝ 細身の体で髪色は白い長髪だ。黒い瞳が吸い込まれるような魅力を放っている。ゲームの中の住人とは思えないほどリアルだ。
”もしかしてやきもちやいてる?”
”もしかしなくてもやいてるよ”
”え・・・ハクかわいい!”
”からかわないでください”
”家に帰ったらぎゅーしてあげるからね”
”子ども扱いですか”
”そんなことないよ、大好きだから♡”
”かわいいですね、うるは”
そんなやり取りをしている間に家の最寄りのバス停に着いた。
バス停から歩いて家に向かっていると人影が見える。
「元気してる?」言いながら抱きついてくる。
うるははびくっと身をすくめる。
抱きしめてくる方向を見るとプロフィールが表示されている。
【
「あ、涼葉!」
「んー?何かあったなー?」
涼葉は国立大学付属高校に通う秀才だ。家が近いこともあって幼稚園の時からの幼なじみである。
「って、涼葉おしりなですぎだよぉ」
「えー?だってうるはのおしりがかわいいから」
そのまま涼葉の家まで連行される。
「あら、いらっしゃいうるはちゃん」涼葉のお母さんが歓迎してくれる。
「お邪魔します」ゴーグルを外してぺこりとお辞儀をする。
革靴を行儀よく揃えて置くとそのまま2階の涼葉の部屋に向かう。
「で?どんな男?」
「まだ何も話してない!」
「顔に書いてある」
「うーん」
「クラスの子?」
「え?涼葉もしかして変なアプリでストーカーしてない?」
「してなくてもこれくらいは分かるよ」
「うーん、神無月来夢って男の子なんだけど」
「来夢君か」
「私男の子と付き合ったことないしよく分からなくて」
「うーん、好きなの?」
「好きと言えば?でも、神無月には双子の姉もいてその子と私仲良くて、姉と弟だけど仲良くて?みたいな」
「おー、なんか少女漫画みたいな世界になってるなあ」
「それに私にはハクがいるから」
「ハクさんねえ、まあそれはそうか」
「うん・・・」
「ね・・・それはそうとしてさ」
「え・・」
涼葉がうるはの上に体を入れて押し倒す。
涼葉のボブの髪が揺れる。
涼葉のくちびるがうるはのくちびるに軽く触れる。
「す、涼葉・・・」それでもうるはは抵抗しない。
涼葉の手がうるはのスカートから出ている太ももをなでる。
うるはの目が潤んでいる。
「今日はここまでにして少し勉強しよっか?」涼葉が急に手を止めた。
うるははほっとしたようなお預けをくらったような複雑な心境で涼葉をにらむ。
「ばかぁ」
そこから涼葉の部屋で2時間勉強をした。
涼葉は長い付き合いだけあってうるはの分からないところや苦手なところを的確に教えてくれた。
涼葉は先生になればいいのにとうるははいつも思っていた。
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