第4話 神無月来夢


 教室に着くとクラスの半分くらいしか来ていなかった。ホームルームがないことはたくさんのクラスメイトに通知があったのだろう。


 携帯端末としてはうるはのしているゴーグル型はまだ主流ではなく依然としてスマートフォンを使っている生徒が多かった。割合としては2対8くらいだろうか。


 ゴーグル型の便利な機能として他人の顔を認識してくれる機能がある。


 たまにしか会わない知人などを見るとサポート機能が働いて名前や年齢などのデータが表示される。


 授業中は外さなくてはいけないが視力矯正しりょくきょうせいのために装着している学生などは授業中もそのままで良いことになっている。その場合でもイヤホンは外さなくてはいけないが。



 教室の反対側に男の子が座ってスマートフォンをいじっている。


 【神無月来夢かんなづきらいむ 男性 16歳 身長170㎝】と表示されている。誕生日などのプロフィールも検索すれば出てくるがそこまでは表示させないでおいた。


 来夢と目が合う。と言ってもうるはの目はゴーグルで覆われていて外からは見れないが。


 すると、来夢が歩いてうるはの方に近づいてくる。


 え!!


 うるははうろたえる。


 来夢は髪の毛をウルフカットにしていてかっこいい、多分クラスの女子にもかなり人気があるはずだ。



 「高梨」少し高い声だ。


 「なに?」


 「ゴーグル外して見てよ」


 「やだ」


 「お願い!」


 「授業始まったら何時いつも外してるでしょ」


 「でも、そうすると高梨の方むけないじゃん」


 「そんなに私の顔見たいの?」


 「是非とも」


 「しょうがないなあ」


 ゴーグルを外すと、二重のぱっちりとした目が少し下の方を見ている。


 「おお!8月からまともに見てなかった気がするけど、やっぱり美少女だよなあ」


 「あ、ありがと」聞き取れないくらいの小さな声でうるはが返す。


 周囲の目もあるのですぐにゴーグルをつけて目線をそらす。



 来夢は自分の席に戻るとすぐにうるはにチャットを飛ばす。


 ”今度遊びに行かない?”


 その文面を見ながら


 ”考えておく”とだけ返信した。

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