コスプレは誘惑の為に


 ソファに倒され、綾香が俺のお腹のに跨る。いわゆる馬乗りの体勢なのだが……いつもされているより衣装の生地が薄いからか伝わってくる感覚がかなり変わってくる。


 服を捲られているからお腹に直接綾香の肌の感触が、柔らかさが、暖かさが伝わってきてさっきから心臓がバクバクと音を鳴らす。


「ふふっ、冬夜くんの心臓すっごいバクバクしてるね」

「……そりゃそうだろ」

「音聞かなくても見てわかるもん♡」


 そう言いつつ俺の体に手を這わせお腹から胸の方へと少しづつ移動させる。その手の感触がさらに俺を興奮させる。


「それじゃあ始めるね?」


 そう言うと綾香が身体を倒し俺にしなだれかかるように顔を近づける。


 そして可愛く、でも悪魔的に舌を出し俺のお腹をペロリと舐める。


「……っ!」

「んっ……」


 ちゅるちゅると唾液混じりの音が響く。綾香の全ての行動が俺を刺激して理性がゴリゴリと削られていく。


 欲望をなんども刺激され手を出してもいいんじゃないかと訴えてくる。


「あや……さすがにそういうのをされると……」

「ふーん?じゃあもっとするね♡」


 俺の言葉を聞いた綾香がさらに嬉しそうに舌を這わせる。ぺろぺろと舌を出し舐めるその姿も扇情的で俺を刺激してくる。


 サキュバスが奉仕をしてくれる、そんな夢のような光景が俺の視界に広がり自分の欲望以外の全てを奪っていく。


「じゃあ、そろそろ……」


 顔を離し俺の耳元へと近づいてくる。


「(今度はとうくんのこと洗脳しちゃうね♡)」


 その次の瞬間綾香の甘いことが優しい脳に響いてくる。反対の耳は手で塞がれて綾香の声以外が入ってこないようにされている。


 時折耳を舐める行為がさらに俺の意識を甘く溶かしていく。


 まるで煮えたぎった砂糖のように理性がドロドロと溶けていく。


「(私のことしか考えられなくなっていくね?)」


 綾香の言葉が抵抗なく俺を洗脳していく。


 俺はその言葉にどんどん俺は身を委ねていってしまう。最後の抵抗をするための理性すら溶かされ最早綾香の思うがままだ。


「(我慢出来なくなったらシてもいいんだよ)」


 綾香の言葉に思わず手を伸ばしてしまう。その伸ばした手で綾香を抱き寄せて口を塞ぐ。


「んんっ……」


 キスをしたまましばらく口を離さない。呼吸が出来なくなるギリギリまで我慢してから離す。


「……ぷはぁ!はぁっ……はぁっ……」

「苦しそうなあやも可愛いな」

「もう、とうくんのいじわる」


 そう言って今度は綾香の方から口付けをしてくる。さっきみたいなキスではなくなんども啄むようにちゅっちゅっと口付けを交わす。


「とうくんの唇……美味しい……♡」


 蕩けた顔でそう言ってさらに口付けを交わす。


 何度も口付けを交わしているうちにリビングの時計が11時になった音を告げる。


「……ここからが真のお楽しみだよ」


 綾香が部屋の電気をリモコンで消す。視界が真っ暗になり周りを把握するための手段が音しかなくなる。


 ゴソゴソと衣擦れの音が微かに聴こえ、自分の顔が柔らかい感触に包まれる。


「(君のことめちゃくちゃにシてあげる♡)」


 初めて"君"と言われてその新鮮さに背中にゾクゾクとした感覚が走る。


 綾香のその責めは俺の意識が途切れるまで続いていった。






 目が覚めるとカーテンの隙間から朝日が覗いていた。ガンガンと鳴る頭を押さえつけ起き上がる。


 とりあえず上半身が何も着ていないのは想定していたので特に驚きもしない。辛うじてズボンも履いているので一線は超えていないだろう。そういう跡も付いていないので超えていないのは確実だろう。


「おはよう、冬夜くん」

「……おはよう」

「身体は大丈夫?」

「……頭いたい」

「とりあえず甘いの飲む?」

「綾香みたいに糖分で治る身体じゃないぞ」

「物は試しだよ」


 綾香の入れてくれたミルクティーをグッと飲み込む。


「あっっっっま」

「どう?頭痛収まった?」

「……多少な」


 想像以上の甘さだったが一応糖分が染み渡って軽く頭痛が収まる。


「昨日の記憶ないんだが」

「途中で寝落ち?してたね」

「……おう」


 理性に抗ったからかなんなのかはわからないが俺の意識はいつの間にか闇の中に沈んでいた。


「あの後は美味しく頂きました」

「舌なめずりしながら言われてもな」

「大丈夫、私から超えたりはしないから」

「それされたら寝てる間にしてそうだからな」

「流石に反則だもんね」


 寝て起きたら綾香が上にいたとかシャレにならないだろ。


「昨日の話聞きたい?」

「……やめとく」

「そう?」

「聞いたらそれでも頭グラグラしそうだし」

「話したくなるじゃん、そういうこと言われると」

「虐めるのが好きなのか?」

「好きな人を虐めるのは好きだよ、でもそれ以上に虐められたいかな?」

「よし、この話はここまでにしよう」


 パンっと手を叩き無理やり話を終わらせる。


「とりあえず風呂はいってくる」

「はーい、その間にご飯作っとくね」

「頼んだ」


 こうしてハロウィンの夜は明けた、勝負には勝ったが試合に負けたみたいな結果だったけど目的は達成出来たので満足していいだろう。


 この先のことを考えると後1ヶ月これがあるのか……と憂鬱になってしまうが。

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