まずはコスプレをせずに
「ただいまー」
「おかえりー!」
そう言ってボフっと綾香が飛び込んでくる。それを若干よろけつつ受け止め抱きしめる。
「やけにテンション高いな」
「だってハロウィンだよ?コスプレだよ?」
「……その感じは多分相当な物を用意してそうだな」
「ふふーん、楽しみにしててね?」
「おう」
「それはそれとして、お風呂入るよね?」
「そうだな」
「じゃあその間に晩御飯の準備しとくね。私は晩御飯の後に入るし」
「ありがと、なるべく早く上がって手伝うよ」
「ゆっくりでいいよ」
そう見送られ俺はお風呂へと向かった。
お風呂から上がるとキッチンからいい匂いが漂ってきていた。今日はハロウィンということで2人で相談してカボチャとかを多く使った料理を予定している。
「いい匂いがしてるな」
「あっ、もう上がったんだね」
「言われた通りちゃんとゆっくりしてきたからな?」
「よろしい!」
「じゃあ手伝うから一気に仕上げようか」
「おっけー」
俺もエプロンを付けて綾香の隣に立ち料理を進めていく。内容としてはパンプキンスープにカボチャのミートパイ、この2つがメインだろうか。後は普通に付け合わせを作るだけなのでそこまで難しくもない。
ちなみにテーブルの上にはくり抜かれたカボチャが2つ置かれており2人で1つずつ時間をかけて作った。
当然こんなことをしているので家の中も若干ハロウィン仕様になっておりなにもしてなくても少しテンションが上がっている。
「よし!スープは完成だよ!」
「ん、じゃあパイが焼けたら食べようか」
「あい!」
パイが焼けるまでの間に配膳を済ませる。それから焼き上がったパイをテーブルの上に置けば結構ハロウィン感のある晩御飯になったのではないだろうか。
パイの上に作った顔もちょっと嬉しそうにしている……気がする。
「「いただきます」」
そう言ってまずはパイを切り分け、それぞれの皿に取り分ける。
「美味そうに出来たな」
「こういうのはやっぱり冬夜くんの方が上手だよね」
「綾香も出来るだろ?」
「出来るけど、ちょっと自信ないかな?」
「なら一緒に練習しようか」
「ほんと?」
「もちろん、いくらでも付き合うよ」
そんな会話をしつつミートパイを口に運ぶ。程よく重量感がありつつ、カボチャも感じるので殆ど完璧と言えるだろう。
「美味いな」
「普通にまた食べたいかも」
「だな、まぁ時間がある時にしか作れないけどな」
「ちょっと手間かかるもんね」
会話に区切りが着いたところでパンプキンスープを飲む。こちらも優しい味が広がり身体を満たしていく。
「よかった、美味しく出来てる」
「綾香が作ったのは優しい味がするな」
「そうかな?」
「母の味って感じがする」
「……私まだ女子高生だよ?」
「やってる事は主婦だからなー」
「……後で私がピチピチの女子高生ってこと解らせてあげるね?」
「よし、この話は1回終わりにしようか」
ただでさえ色々と怖いのにこれ以上誘惑しようとするものなら普通に耐えれなくなりそうだし。
「そろそろ食べるのに集中しようか」
「だね、冷めてもやだし」
少しだけ会話の量を減らしご飯を食べることに集中する。いつもより楽しく晩御飯の時間を過ごしていった。
晩御飯を食べ終わって洗い物を済ませる。
「それじゃあお風呂入ってこようかな」
「ゆっくりして来てくれ」
「はーい、冬夜くんも準備しといてね?」
「……おう」
そう言って綾香がリビングのドアの向こうに消えていく。俺の準備なんて言っているが要はお風呂上がったらコスプレするから心の準備をしておけ、という事だろう。
確かサキュバスのコスプレをするとか言っていたから露出とかそこそこあるだろうし、それを風呂上がりにするって言うんだからめちゃめくちゃ怖い。
どんなコスプレになるか想像はしてないけどきっと俺を誘惑する為の手段とかはちゃんと考えているだろうから今はただそれに対して覚悟を決めておくことしか出来ない。
それでも理性をあっという間に溶かされそうになる気がしてならないが。
「ふぅ……」
息を吐き心を落ち着かせる。こうして待っているだけの時間はいつもならすごいゆっくり過ぎていくのだが今日だけは時間の流れが早いようでいつの間にか綾香がドライヤーを使っている音が聴こえてくる。
それから10分もすればリビングのドアが開く音と綾香の声が聴こえてくる。
「お風呂、上がったよ」
「ん」
「それで……こっち見てくれる?」
「……わかった」
立ち上がって綾香の方に振り向く。
真っ先に目に飛び込んで来たのは半分以上が露出しているそのたわわに実った果実だ。次に全身に目を通すと案の定全体的に露出が高く、隠れている所を挙げた方が早いレベルだ。
全体に黒を基調とした水着のようなデザインで、足はブーツのような物を履いている。腰にはパレオのようなものが軽く巻かれているがそれも隠すためのものではないだろう。
動く度にぴょこぴょこと揺れる尻尾や、頭に付けている角なんかが非日常感があっていいし、なによりお風呂上がりと言うことで全身少し火照っているのがなんとも言えない色気を醸し出している。
「どうかな?」
「すげぇ可愛い」
「ふふ、でも"可愛い"だけじゃないよね?」
「……言わせる気か?」
「その反応で何となくわかったから大丈夫だよ」
綾香が蠱惑的な笑みを浮かべながら近づいてくる。俺は一瞬後ずさりをするがどうせすぐソファに押し倒されるんだろうな、と思い抵抗をやめる。
「さ、お楽しみの時間だね♡」
これから起こることに覚悟を決めつつ俺は息を飲んだ。
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