なんだかんだぬいぐるみを買う


 お昼ご飯の後一通り水族館を回った所でお土産コーナーへと足を向ける。


 キーホルダーや、ぬいぐるみが数々置かれているしちょっとした食べ物もある。と言ってもクッキーぐらいしかないが。


 こうなってくるとお土産を選ぶのが難しい。いやまぁ会社なんかに持ってくのはクッキーとかでいいと思うけど正直買う必要すらないと思う。


 だから俺は買う予定がない。予定があるのは綾香だ。どうやらぬいぐるみを増やしたいらしい。いや、置く場所あるのか?と毎度思ってしまうが綾香曰く大丈夫!らしい。


 ちょっと前にぬいぐるみの整理として幾らか実家に送ってたし場所はあるんだろうけど結局すぐ買ったら意味がないんじゃ……とは思ってしまう。


「それでどれを買うんだ?」

「んー、サメはいるからアザラシとか?丸くて抱き心地良さそうじゃない?」

「確かに、抱きやすそうだな」


 まんまるのアザラシのぬいぐるみを見ながら会話をする。……うん、それを抱えてる綾香もきっと可愛いだろう。


「でも結構種類あるしもうちょっと悩もうかな」

「ゆっくり選べばいいよ。時間はあるしな」

「ありがと」


 そうは言っても俺がすることがほぼない。会社に土産を買う訳でもないし、自分に買う訳でもないからほぼ綾香を見ているだけの時間になりそうだ。


 ただ1つを除いて。


「……一応見てみてるか」


 俺は綾香の見ているぬいぐるみコーナーに近寄って何となく物色する。探すのはイルカのぬいぐるみだ。大きいのでも買えないことはないのでサイズは気にしない。


 目的のイルカのぬいぐるみを見つけ色々種類があるのから1つを選んでいく。


 最終的に少し大きめのぬいぐるみを選ぶことにした。それを持って綾香の元に戻ると少し目を丸くして迎えられる。


「……冬夜くんがぬいぐるみ買うの?」

「いや、これは翡翠への土産だな」

「なるほどね、翡翠ちゃんってイルカが好きなの?」

「前にそんなことを言ってた気がするんだよな」

「へぇー、じゃあキーホルダーとか喜んでくれるかな?」

「多分喜んでくれるぞ」

「ならちょっと探してみるね。ぬいぐるみはいいの見つけたから」


 だろうな、と心の中で呟く。さっきから大切そうにアザラシのぬいぐるみを抱えているからそれにしたんだろう。そのまま抱えた状態でキーホルダーを探しに行く。


 その行動が既に可愛い。若干気分も上がっているのだろう、足取りもどこか軽やかだ。


 多分家なら鼻歌とか歌っているんだろう。そんなことを考えていると置いていかれそうになったのでちょっとだけ急ぎ足で追いつく。


「キーホルダーならどんなのがいいかな?」

「普通にイルカのやつでいいんじゃないか?」

「まぁそうだとは思うけど……ちょっと悩むよね」

「確かにな、種類も多いし」


 普通にイルカが付いているだけのものや、球状のアクリルの中にあるもの、おそらく番の2匹ついてるものなど沢山ある。その中からひとつを選ぶのはちょっと悩んでしまう。


「どれにしようかなー」


 綾香がぬいぐるみを抱えたままキーホルダーを物色する。まだ購入してないから出来ればカゴにいれて欲しいが……まぁ誰かに言われなければいいだろう。


「あっ」

「どした?」

「これなんてよくない?」

「おお!」


 綾香が選んだのは大きいイルカが2匹と小さなイルカが1匹付いているものだ。親子を模しているんだろう、3匹が仲良さそうに引っ付いている。


「いいなこれ」

「でしょ、可愛いしこれで決定かな?」

「だな。もう買うものはないか?」

「うん。他に買うものはないしね」

「おっけ」


 ぬいぐるみ2つとキーホルダーをレジに通して俺たちは水族館を出る。


「ゔぁ……暑……」

「水族館出たら暑いな……」

「……ね、どこか寄る?」

「ちょっと飲み物が欲しいな」

「小腹も空いたしハンバーガーとか食べない?」

「採用、すぐ行こうか」

「うん!」


 車に戻って近くのファストフード店まで走らせる。なんだかんだ3時前ということでそこそこ人がいる。


「綾香はなに食べたい?」

「月見バーガー!」

「そういやそんな時期だな」

「うん、冬夜くんは?」

「安定のてりやきかな」

「ポテトは食べる?私は結構食べたいけど」

「俺はちょっとあればいいしLサイズ1つにしとくか?」

「おっけ」


 注文して数分で完成してそれを持って席につく。美味そうな匂いが鼻腔をくすぐり食欲を刺激される。


「いただきまーす」


 綾香がガブリとハンバーガーに噛み付く。俺も大きく口を開けて食べる。


「ん、久しぶりに食べるとやっぱ美味いな」

「ねー、こういうのは定期的に食べたくなるもん」

「ポテトとかそうだよな」

「でもこればっか食べてると太るんだよね……」


 自分のお腹をツンツンとつついて気にするように目を落とす。


「綾香はそんなに太ってないだろ」

「ちょっとでも油断したらつまめたりするよ?」

「ちょっとぐらいはいいんじゃないか?」

「ダメだよ!その……もしもの……時に……ね?」

「勢いの減衰がすごいな」


 多分そのもしもの時というのはだいぶ先だろうけどそれでも油断はしないほうがいいんだろう。


「でも冬夜くんが好きなら全然そうするよ?」

「俺は体型に関しては綾香がしたいようにすればいいと思うぞ」

「結構太ってても?」

「……ある程度標準ならなんでもいいぞ」

「ん、任せて」


 そう言って幸せそうにハンバーガーに噛み付く。俺もこの幸せを噛み締めつつハンバーガーを食べる。


 こう言った時間がもっと取れたらいいなと思いつつおやつの時間を過ごしていった。

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