ペアアクセサリー


 体育祭のお疲れ様会の翌日。二日酔いなどなくすっきりとした朝を迎える。


 今日は日曜日だが予定があるため昼までだらだらはしていられない。適当に朝ごはんを食べ、洗濯物などを終わらせる。その頃には綾香が起きてきて眠そうな目でパンを頬張っていた。


「おはよう」

「おふぁよぅ……」

「昨日はよく寝れたか?」

「そふぉそこ」

「……話しかけて悪いが飲み込んでから喋ろうか」


 そう言うとパンを飲み込み、飲み物を飲み干して俺に向き直る。


「昨日はいい思い沢山したからよく寝れたよ」

「そっか、なら今日のお出かけは大丈夫そうだな」

「うん!」


 そう、今日の予定は綾香とのデートである。内容は以前に考えていたお揃いのアクセサリーを買うことだ。指輪は綾香に一方的にあげたものだし、ピアスなんかを買おうかと思っている。


 俺はピアスなんて付けたことないので色々と不安だが綾香と一緒なら大丈夫だろうと精神でいくつもりだ。


「んじゃ洗い物とかやっとくから準備してきていいぞ」

「ありがと」


 綾香の食べ終わった皿を洗って俺も出かける準備に取り掛った。






「準備できたよー」

「ん、なら行こうか?」

「はーい」


 いつもの如く手を繋いで家を出る。それから駅まで歩いて、電車に乗る。


 今日行くのは前にも行ったことあるショッピングモールだ。その中にあるアクセサリーの店で選ぼうと思ってる。


 店に着くまで今日の晩御飯は何にする?とか綾香の学校の予定とか、特に意味のない話とかをしていた。そうしている内に店に着く。


「さて、どんなのがあるかな〜?」

「お金は気にしなくていいぞ」

「ある程度は気にするよ?」

「まぁ妥協しなかったらそれでいいよ」

「わかった」


 綾香なら言わなくても値段とかはある程度気にするだろうし、大丈夫だろうけどそれが理由でやめて欲しくないから一応言っておいただけだ。


「そうだ、穴はあける?」

「どっちでもいいよ。俺は開けたとこで問題ないし」

「私も大丈夫だけどねー、校則でも許されてるし」

「ほんとうちの学校はゆるゆる校則だな」

「自主性に任せてるんだよ」

「便利な言い方だな」


 何にせよ色々見てから決めようと言って2人で店内を回る。


「どんなのにしようかなー」

「綾香に似合うやつを探したいけどな」

「お揃いだから冬夜くんも付けるんだからね?」

「……そういえばそうだった」

「可愛いの選んでもいいんだよ?」


 口元に手を当ててにひひと笑われる。その頭に軽いチョップを落としてせめてもの仕返しにする。


「あてっ」

「さーて、何にしようかなー」

「むぅ……」

「ほら、早く一通り見ようぜ?」

「……はーい」

「どした?」

「なんでもないよー」


 仕返しにちょっと不機嫌な綾香を放っておくわけにいかないので俺は顔を近づけて頬にキスをする。


 もちろん他の客や店員に見られないように。


「〜〜〜〜〜〜っ!!!」

「これで機嫌を治してくれ」

「……はい」


 その後顔を真っ赤にして俯いて俺の後ろをとてとてと着いてくる綾香はとても可愛かった、とだけ言っておこう。






「これでお願いします」

「わかりました。ではレジへどうぞ」

「はーい」


 綾香が店員さんと会話して買うものを決める。もちろん2人で相談して決めたものだ。


 一緒にレジに向かって俺が支払いを済ませて店を出る。


 買ったのは特に派手な装飾とかはなく、俺がつけても綾香が付けても違和感がないようなものにした。


 シルバーのフープピアスって言えばいいのかな?始めてだし最初はこれで、ということで決定した。


 ただ俺としてはすこし不安が残っている。


「ほんとにこれでよかったのか?」

「うん、初めてだしこれでいいんだよ」

「ならいいけど……これ思いっきりメンズだぞ?」

「そうだね〜」

「なんでにやにやしてるんだ」

「だって男物のピアス付けてるのちょっとアピールにならない?」

「そういうことか……」

「私そういうアピール出来るの好きだから」

「だから首元噛んでとか言うのな」

「わーーー!!!それ!今はなし!!」

「外で叫ぶな」

「あてっ」


 再びチョップを落とし、手を繋ぎ直して近くのカフェへと向かう。


 俺はコーヒー、綾香はミルクティーとパンを頼んで席に座る。


「はふぅ」

「一息つけたな」

「ね、今日は人が多くて疲れるよ」

「思ったより多いよな。この後どうする?」

「正直帰ってイチャイチャしたいです」

「欲望に正直だな」

「でもぬいぐるみ増やしたかったりする」

「大好きだな」

「そろそろ新しいの欲しくない?」

「俺の部屋にぬいぐるみはほとんどないぞ」

「私があげたのしか無いもんね?」

「そうだぞ」


 ベットの近くに置かれている小さな物しかぬいぐるみはない。大きいの置いたらスペースが……


「てか綾香の部屋におくスペースあったか?」

「……あるよ?」

「重ねるだろ」

「そうだけど……よくない?」

「崩れたときどうするんだ」

「それは幸せだと思います」

「……1個だけだぞ」

「ありがと!冬夜くん!」


 そう言ってパンを差し出してくる。綾香には甘いなーと自覚しつつパンを頬張る。


「あっ!ちょっと食べ過ぎ!?」

「……ん。くれたの綾香じゃん」

「限度があると思うの」

「じゃあほら、コーヒーあげるから」

「………………それブラックだよね」

「そうだけど?」

「私が飲めるとでも?」

「何事も挑戦」

「挑戦して無理だった人がここにいるんです」

「ほら、これ飲んだら関節キスできるぞ」

「うぐっ…………………………じゃあ1口だけ」

「ん」


 ストローを綾香の方に向けて少しだけ飲ませる。口を付けて少し吸った瞬間に綾香は顔をしかめて口を離す。


「……苦い」

「ブラックだからな」

「いじわる」

「なんの事かな?」


 こんなやり取りを30分程やってると周りから微笑ましいものを見る目と妬ましい目で見られ始めたので俺たちはそそくさとカフェを出ていくことになった。

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