ピアス穴自分で開けるの怖いよね


 カフェを出たあとお昼ご飯を食べて綾香の要望にそってぬいぐるみを買いに行く。


 ぬいぐるみの専門店……ではないが可愛くて触り心地がいいぬいぐるみがあるという店を訪れた。


「あ、これこれ!このサメが欲しかったの!」

「たまに見るやつだな」

「でしょ?」

「おう」


 テレビやSNSアプリでたまーに流れてくるサメのぬいぐるみ。好評なのが何度も伝わってきてぬいぐるみを欲しない俺ですら気になっていたぐらいのものだ。


「これがあるならもう決まりだけど……冬夜くんはなにか買う?」

「いや、俺は買わないよ」

「そっか。じゃあレジへ行こ」


 綾香がぬいぐるみを抱えレジに向かう。それを見るだけで可愛いと思ってしまうが見せないように隠してついて行く。


 会計を済ませ大きな袋に入れて貰う。綾香が再び抱えるようにして持って歩く。


「じゃあ早いけど帰るか、特に用事もないし」

「だね。帰ってやることもあるしね」


 帰ってやることと言ったら大体は家事だが、今日は1つ大事な行事がある。


 それの為に今日は少し早く帰ろうということに2人で至った。


「あ、帰り道にケーキでも買って帰るか?」

「買う!」

「おっけ。じゃあ少しだけ寄り道して行こうか」

「うん!」


 ぬいぐるみを抱えて上機嫌な綾香と歩く。それはもう周りから色んな視線が飛んできたが気にせず俺は綾香と歩いて行った。






「それじゃあ……いれるぞ?」

「うん、いいよ……」


 神妙な面持ちで俺は綾香の身体に手を添える。なるべく身体を密着させて綾香を全身で感じる。


「目瞑ってていい?」

「いいぞ」


 綾香がギュッと目を瞑ってそれを待つ。それを見て俺は遂にそれをいれる。


「いくぞ……!」

「……いつっ!!」


 それをいれた瞬間綾香から悲鳴のようなものが漏れる。そして涙混じりの目で俺見る。


「あ、開いた……?」

「おう。無事に開けれたぞ」


 随分紛らわしい反応だった気がするけど無事綾香の左耳にピアスを付けるための穴が開いた。俺は先に開けたので既に開いている。


「はふぅ……痛かったぁ……」

「大丈夫か?」

「大丈夫だけど……なんか気になる」

「まぁ開けた直後だしちょっとは違和感あるだろ」

「かもね。じゃあピアスも付けてみるね」


 机の上のピアスを取り、机に置いた鏡を見ながらピアスを付ける。


「……どう?」

「似合ってるよ」

「ありがと、冬夜くんも似合ってるよ」

「俺はいいよ」

「普段付けないの?」

「仕事中は流石に付けないしな……」

「流石に許されなさそうだもんね」


 指輪とかならまだしもピアスなんか完全にお洒落用なので許されないだろう。もちろん確認を取っているわけじゃないからわからないが、普通にダメだと思う。


「うー……」

「どした?」

「まだ気になる……」

「そんなにか?」

「ピアス付けたから余計かな?重さとかですごい意識しちゃう」

「あー、そういうのもあるのか」

「というわけなのでどうにかして下さい」

「随分と無茶な注文だな」


 こんな状況で俺が出来ることなんてほとんど1つしかなくて……


「綾香、こっち向いて」

「ん?……んっ!?」


 なんで綾香が油断してたかはわからないけどそのおかげであっという間に綾香の咥内を征服できる。


「んむっ……んんー!?」


 強く抱きしめて綾香の耳を塞ぐ。こうしたらキスの音が響くらしいのだが……綾香の反応を見る限り良さそうだ。


「……はぁ、はぁ……とうやくん、いまのもっとして?」

「じゃあもっと激しくするぞ?」

「いいよ、わたしのことめちゃくちゃにして?」

「……またそういう」


 自然と煽ってくる綾香の耳と唇を塞ぐ。さっきよりも大きな音をたてるようにキスをすれば綾香の身体から力が抜けていくのがわかる。


 頭の後ろに手を回して簡単に離れないようにしつつ俺は綾香をソファに押し倒す。もちろんキスは続けたままで。


 少し酸欠気味になるまでした所で口を離す。


「はぁっ、はぁ……もうおわり……?」

「まだするぞ」

「ふぇ──んむっ!?」


 綾香に休む暇を与えることなく更にキスを重ねる。そうすると綾香が俺を抱き締めいた手すら離して完全に力が抜ける。


 そうなった所で再び口を離す。リビングには2人の荒い呼吸の音だけが響く。綾香はとっくに蕩けきって恍惚とした表情を浮かべている。


 ただ俺が主導権を握っているいるぶんいつもよりかは理性が残っている。これ以上するとやばい、とさっきから警鐘も鳴っている。


「……もぉおわい?」


 呂律の回っていない言葉を発せられるとちょっとやりすぎた気がしてしまう。けどこれだけ蕩けた綾香が見れたならいいだろう。


「あぁ、そろそろ晩御飯の準備もしなきゃだしな」

「……うぅ」

「……ちょっとやりすぎたか?」

「ううん……きもちよかったからまたしてほしいな?」


 僅かに微笑みながらそう言われると断れないな、と思いつつ俺はその表情をスマホのカメラに収める。


 その時は綾香も合わせてくれてちょっと……いやかなり危ない感じの写真が撮れた。


 もちろん後から思い出して消してーー!!と顔を真っ赤にして俺の胸をポカポカと叩いてきたのは言うまでもない。

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