テスト2日目の朝
ーー綾香ーー
意識がゆっくりと覚醒していき私は目を覚ます。いつもならまだ半分程頭が寝ているけど今日はすっきりと起きれた。
窓の外を見るとまだ少し薄暗く私は時間を確認しようといつもスマホを置いているところに手を伸ばそうとする。けどなぜか手が動かない。
なんでだろうなと自分が動こうとして原因を知る。後ろから抱きつかれているのだ。そして腕まですっぽりとその中に埋まっているため私は動けなかった。
当然抱きついてくれているのは冬夜くんだ。
「……ちょっとだけ動けないかな?」
抱きつかれているのは嬉しいけど時間を確認して2度寝するか決めたいので私はモゾモゾと動いて腕を出そうとする。
「ん……」
すると冬夜くんがさらに強く抱きしめてきて絶対に抜け出せないレベルで私は捕まってしまう。
「とうやくんっ!?」
昨日の晩から体勢が変わってなくて冬夜くんの声が耳元で響く。慌てて声が出てしまう。ハッとして口を閉じて数秒待つけど冬夜くんが起きる素振りがなかったので一安心する。
けど安心しているわけにもいかない。このままだともし寝言で愛を囁かれたりなんてしたら私はどうなってしまうのかがわかっている。
一刻も早く抜け出さないとと思って動いてみるも冬夜くんの拘束からは離れられなくて諦めるしかないことを悟る。
「……むぅ」
もし冬夜くんの方を見ていたなら胸をポカポカと叩いて怒っていたことだろう。けど今の状況でそれが出来るわけもなく私はなにをしようか考える。
そこである事に気づく。冬夜くんはいつも目覚ましをかけているのだ。その時間に起きるはずだからまだ起きる必要がないことに、そして2度寝してもいいんじゃないかと言うことに。
そうと決まれば行動は早い。
私はさらに縮こまるようにして冬夜くんの腕の中に収まっていく。ちょっとお尻とかをグリグリと押し付けるように動いてしまったけど寝てるし大丈夫だよね、と納得して私はいいポジションを探す。
やがていい感じに収まると冬夜くんの温かさと安心感に包まれて眠気がやってくる。
それに抗うことなく私は眠りに落ちていった。
ーー冬夜ーー
目覚ましの音で目を覚ます。身体の温かさからわかってたけど綾香がかなり近い距離にいた。俺は起こさないようにそっと動いてベットを出る。
「とうやくん……すきぃ……」
代わりに抱かせたぬいぐるみを抱きしめて綾香が寝言を呟く。それは俺じゃないぞ、と心の中でツッコミを入れつつ綾香の耳元に顔を近づける。
「俺も好きだよ、綾香」
そう言って頬にキスを落とす。
それから俺は朝の仕度をする為に着替えをもって部屋を出た。
だから綾香の頬が紅く染まっていたことには気づかなかった。
ーー綾香ーー
目覚ましの音で目が覚める。けどカーテン越しに射し込んでくる光を見たくなくて目を瞑ったままでいる。
その間に冬夜くんは私を起こさないようにゆっくりとベットを抜け出していった。もうちょっといたかったなぁ……なんてことを考えていると私の腕の中にぬいぐるみが入ってくる。
その冬夜くんの優しいが嬉しくてちょっと寝言を言うふりをする。
「とうやくん……すきぃ……」
すると冬夜くんの足音が近づいてきて私の顔に影がかかる。そして耳元に寄ってきて囁いてくる。
「俺も好きだよ、綾香」
その言葉で私の顔は真っ赤に染まってそれを隠すようにぬいぐるみを強く抱く。
冬夜くんが部屋を出ていくまでそうして、ドアが閉まる音を確認して目をうっすらと開けて冬夜くんがいないことを完全に確認する。
それが終わるとベットの上を転げ回った。布団とか盛大に巻き込んでゴロゴロと転がる。
「っ〜〜〜!!」
声にならない声をあげつつ私は転げ回る。
疲れるぐらい回って落ち着いて息を整える。そしてようやくまともに活動を始めた頭をフル回転させて今日はもう起きて家事を手伝おうと決意した。
冬夜くんが洗濯物を回している間に私はエプロンを付けてキッチンに立つ。昨晩の乾かしていた洗い物を片付けて朝ごはんの準備をする。
これぐらいなら手馴れたものでテキパキと進めていく。少しした頃に洗濯物を回した冬夜くんがやってくる。
「おはよ、冬夜くん」
「おはよ、綾香。今日は早起きなんだな」
「うん、昨日ぐっすり寝れたから」
「そりゃよかった。あ、準備手伝うよ」
「ありがと、じゃあこれお願いね」
「任せろ」
卵を混ぜた状態で置いていた卵焼きや、お弁当ようのウィンナーなんかを任せて私は他のものを準備していく。
2人でキッチンに並んで一緒に料理をする。何度かやったことはあるけど朝からこういうことがあったのは久しぶりでなんだか嬉しくなってしまう。
会話は殆どないけど私はちょっと頬緩めながら作業をする。
すると人間油断するもので久しぶりにミスをしてしまう。
「いたっ」
「大丈夫か?」
「うん、ちょっと切っただ……と、とと冬夜くん!?」
切った指を冬夜くんに見せるように持っていったらそのまま切った所を咥えられる。突然のことに私は混乱する。
「……ん、これで血は止まったろ。軽く洗って絆創膏付けてきな、って何してんだ」
「ふぇ?」
「なんで自分の指咥えてんの」
「……ぷはっ。関節キス?」
「いいから絆創膏付けてこい」
「はーい」
パタパタと絆創膏の置いてあるとこまで走る。
「……ほんともう」
あういうことをされるとドキドキするに決まってる。あと冬夜くんも男の人ってことを認識させられた。その興奮が収まらなくて私は朝から大変だった。
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