ご褒美デート


 ーー綾香ーー


 冬夜くんを好きにできた一週間とともにテスト期間が終わった。正直家ではテストより、冬夜くんとのイチャイチャや勝負が多かったけど学校で放課後まで勉強していたぶんいい息抜きになってよかった。そのおかげかテストもいい点数が取れた。


 学年1位も無事に守りきれたので今回は十分すぎる結果が得れただろう。


 というわけで今私は冬夜くんとデートに来ている。


 話の流れが突飛すぎて私が1番びっくりしてるから、まだ頭の整理追いついてないから。


 話の流れとしてはこんな感じ。



 ***



「テスト学年1位だったよー」

「やったじゃん、おめでとう」

「ありがと〜」

「ご褒美何がいい?」

「ん〜、別にいらないよ?」

「めでたいことはちゃんと祝っときたいだろ」

「じゃあケーキ食べたい」

「わかった。じゃあ明日デートいこうか」

「え?」

「ちょうど美味しい店があるってことを知って行きたかったんだよ」

「え??」

「だからよろしく」

「え???」



 ***



 という感じにデートが決定して今電車に揺られています。


「この時間は人少ないな」

「だね、座れてよかったよ」

「そんなに乗らないけどな」

「立ってると疲れるじゃん」

「そんなにか?」

「気分の問題だよ」

「そっか」


 2人で横並びに座ってちょっと声を抑えて話す。大きな声で周りに迷惑かけるわけにはいかないからね。


「そういえば指の傷はもう治ったか?」

「うん、痕も残らなかったよ」


 冬夜くんに指を見せて治ったことを証明する。傷痕ひとつなく綺麗になっていることを確認してもらって手を戻す。


「そういえばあの時急に咥えてごめんな」

「ううん、大丈夫だよ」

「軽い怪我ならいっつもああするからついやっちまったんだよな」

「……人にもしてたの?」

「春弥にはしてたな……後は、あー……」

「ちゃんと言って」

「遥香先輩にやらかした」

「……ふーん」

「1回だけだぞ?綾香の時みたいに紙で指切って出されたからつい……」

「弟くんには結構してたの?」

「小さい頃結構してたよ、おかげで真似するようになっちゃったけど」

「人の咥えるのまで真似してそうだね」

「やってそうだな……」


 白石先輩に今度聞いてみよう。そしてもしやってたら代わりに謝っとこうと心に決める。






 電車降りて冬夜くんの案内でケーキ屋さんに向かう。


 そこは普通にケーキ屋として持ち帰りとかも出来るけど、カフェも経営していて出来たてのケーキが食べれるのだとか。ケーキだけでなく軽食もあるので簡単なお昼ぐらいにはいいのかもしれない。


 お店に着くとそれなりに人がいて店内も賑わっていた。時間が11時なこともあり人が埋まって列が出来るのはこれからといった感じだろうか。


「綾香は何食べる?」

「ん〜どうしよっかな?」


 ついでにお昼も済ませる予定なのでなにを食べるか悩む。無難にパスタとかにしとくべきだろうか?


「冬夜くんは何にするの?」

「俺はフレンチトースト」

「その後によくケーキいけるね」

「綾香だっていけるだろ?」

「そうだけど、男の人で甘党って珍しい気がする」

「案外いるぞ、イメージがないだけで甘いものが好きな人は沢山いる」

「男の人1人じゃこういう店も来にくいもんね」

「だろ、若くてもなかなかこれないしな」


 結局私はパスタを食べることにして注文をする。パスタは注文してから10分程で運ばれてきた。冬夜くんのはまだみたいだ。


「じゃあお先頂きます」

「ん」


 パスタをくるくると巻いて1口食べる。


「ん〜〜〜!」

「美味しいか?」

「お店の味って感じ!」

「感想下手か」

「だって、冬夜くんが作る方が美味しいもん」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど外で言うな」

「はーい」


 そうこうしてるうちに冬夜くんのフレンチトーストも運ばれて来て2人とも食べ始める。


 食べている間は会話も少なくなってもくもくと食べ続けた。


 先に運ばれたのは私のはずなのに冬夜くんが先に食べ終わって食後をケーキを決めている。


「綾香はゆっくり食べていいぞ?」

「うん」


 と言ってももう食べ終わるけど。


「どれがいいかな〜」

「私は苺のショートケーキがいい」

「そういうと思ったよ……じゃあさ、この中だと他に何食べたい?」

「んー……モンブランかな?」

「おっけー」


 そう言ってベルを鳴らして店員さんを呼ぶ。そして苺のショートケーキとモンブランを注文する。


「えっ、冬夜くん好きなの選べばよかったのに」

「綾香のご褒美だしな。お互いちょっと交換ってことで」

「むぅ」

「今度はお互い好きなの頼もうな」

「……それならいいよ」


 ケーキは直ぐに運ばれてくるようで待ち時間もなくテーブルにやってきた。


「ふわぁ……」

「これはすごいな」


 私の目の前には大きな苺が乗って生クリームがふんだんに使われたショートケーキが、冬夜くんの前には大きなモンブランが、カップで見えないけど下の部分には色々と詰まっているのだろう。


「いただきまーす」


 まずは三角形の先端の所を取って1口。


 程よい生クリームの甘さと少し酸味のある苺が絶妙なバランスになっている。それにやわからいスポンジ生地も美味しい。やっぱり家で作るのとは違う。


「美味しそうだな」

「すっごい美味しいよ。やっぱり家で作るのとは違うね」

「モンブラン食べるか?」

「食べる!」


 冬夜くんに食べさせて貰ったモンブランもとても美味しかった。程よい栗の甘みと生地のバランスがよくいくらでも行ける感じがする。


「冬夜くんも食べる?」

「じゃあ1口」


 今度は私が冬夜くんに食べさせてあげる。


 食べている表情を見る限りは美味しそうに食べている。けどちょっと悔しそう。


 そして少し食べ進めて私はケーキの上に乗っている大きな苺に手をつける。


「すっごい甘い!」

「そんなに甘いのか?」

「うん、こんな苺初めてかも」

「それ買って帰ろうか。俺も食べたくなってきた」

「時間大丈夫かな?」

「あー……帰りに取りこれるかな?」

「一応聞いてみよっか」

「だな」


 こうして私のご褒美のケーキの時間は過ぎていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る