週末はデート


 朝ご飯を食べる合間にスマホでネットニュースを見ていると気になる記事が出てくる。


 内容は駅ナカにスイーツ食べ放題のお店ができるとか。近いし行ってみるか。


「綾香」

「ん?」

「今週末にスイーツ食べ放題のお店ができるらしいんだけど」

「行きたい!」

「わかった、予定入れとくね」

「デートだね」

「あぁ、ついでに行きたい所とかある?」

「うーん……とりあえず夏服が見たいかな」

「わかった」

「後は今特にないよ」

「あったら言ってくれ予定考えとくから」

「はーい」


 善は急げと言わんばかりに綾香とデートの約束を取り付ける。週末は綾香とデートできるとなると今からでも少し気分があがる。


 時間がある時に予定を立てとかないと、と考えながらパンを齧る。


「なんか冬夜くんの雰囲気が柔らかくなった?」

「……どゆこと」

「なんだろう、前よりも近寄りやすくなった感じ」

「え、俺そんな感じだった?」

「私はよかったけど多分近寄りづらい人とかいたんじゃない?」

「まじか」

「個人的にはその方が変な人がよって来なさそうだからいいけどね」

「ちょっとしばらく気をつけとく」

「うん」


 しかし雰囲気柔らかくなったか……今までそんなに意識とかしたこと無かったけど近寄りずらかったのか?これに関しては誰かに聞くしかないかな。


「俺そんな近寄りずらかったのか」

「あれ?割とショック?」

「いや、意識してなかったから意外だった」

「なるほどね。そうだな……警戒してるのが分かりやすかったのかな」

「なるほど?」

「だから変な気持ちじゃ近づけない雰囲気だった」

「あー……それはあるかも」


 確かに警戒してたっていうならそれは正しいだろう。実際ずっと気張ってたしな。なら仕方ないだろう。問題はそれが無くなったことなんだよなぁ……原因が全くわからん。


「そんなに悩まなくてもいいんじゃない?」

「そうか?」

「うん、私としては冬夜くんがいい男って知れるのは嬉しいよ。そりゃ嫉妬もするけどね」

「そっか」

「うん、だから冬夜くんはもっとモテモテになってもいいんだよ?」

「綾香意外を好きになる気はないしそれは困る」

「っ……」

「どした?」

「急にそういうこと言うのは卑怯……」

「俺、綾香のダメなラインがまだわからんわ」


 こうして朝の時間は過ぎていく。結局話しすぎて出るのが遅刻ギリギリになったのは内緒。






「あ、先輩。はよざーす」

「おはよう。適当加減がすごいことになったな」

「ちょっと今日は眠くて」

「夜更かししてたのか」

「まぁ……」

「絶対ゲームしてたろ」

「ギクッ」

「多分深夜3時ぐらいまで」

「ギクッ」

「せめて金曜日にすればいいものを」

「いやー……昨日は調子良かったんですよねぇ」

「そりゃよかったな」

「返しが適当っすね」

「まぁ興味無いし」

「ほんとに雑!?」


 和泉がえぇ!?って感じで驚いているのを横目にエレベーターに乗る。慌てて乗ってきたのを見てから階数を押す。


「あ、そうだ先輩」

「なに?」

「今日飲みに行きません?」

「えー……」

「うわ、めっちゃ嫌そう」

「家で飯食ってる方がいいし」

「なかなかいねぇっすよ。そんな人」

「希少種ってことは自覚してる」

「なら飲みに行きましょうよ」

「ならってなんだ。意味わからんぞ」

「実は良いとこ見つけたんすよ」

「……場所だけ聞いといてやろう」

「喫茶店なんすけどね」

「喫茶店で飲むのか?」

「夜はBARになるんす」

「へぇ」

「で、場所はちょっと入り組んだとこにあってですね。結構雰囲気もいいんすよ」

「んで1人は嫌だから一緒にと」

「なんでわかるんすか」

「お前がいいそうな事だし」


 今度はこの人やべー、みたいな表情をして若干距離を取られる。そんな露骨にされると俺ちょっと悲しいよ?


「まぁ……お願いします!」

「はぁ、わかったよ」

「まじすか!」

「明日な」

「やったー!」

「うるさいから叫ぶな」


 歓喜に満ちている和泉を横目に明日晩御飯食べないって言っとかないとなとメモをする。それから荷物を置いてからいつものように和泉と飲み物を買いにいく。


「そういや先輩」

「なに?」

「先輩って一人暮らしっすよね」

「だな」

「今誰かと住んでます?」

「というと?」

「なんか考え方が同棲してる人に近い気がするんすよね」

「……お前ほんと勘だけはいいな」

「それはどうも、ってマジなんすか」

「誰かと住んでるは本当だよ。言わないけど」

「了解っす」

「理解が早くて助かる」

「誰に育てて貰ったと思ってるんです」

「俺だな」

「優秀な後輩になるに決まってますよ」

「お前が女の子ならラブコメでも始まりそうだな」


 すると和泉が完全に黙り込んでこちらを見続ける。


「なぜ黙る」

「先輩……ラブコメとか知ってるんすか」

「俺をなんだと?」

「気取った本しか読まないと思ってました」

「普通に読むぞ」

「まじすか……じゃあオススメ今度貸しますね」

「なら俺も持ってこようか」

「お!いいっすね期待してますよ!」

「既読のは嫌だから事前に言えよ」

「了解っす」


 和泉とそんな約束を取り付けて休憩スペースを後にする。


 朝から楽しいことが多かったからかその日1日の仕事は結構楽しくできた。

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