パーティゲーム


「冬夜さん強すぎませんか……」

「おにーさん最強だね〜」

「冬夜くんは手加減を覚えた方がいいよ」

「え、俺手加減してるつもりなんだけど」

「これより強くなるの!?」


 今やってるのは最大8人で出来る格闘ゲームでコントローラーも人数分あることだしやろうかと言うことでやることになったゲームだ。


 一時期かなりハマって弟とずっとプレイしていたのでどうやら俺の実力は相当なものらしい。誰かに確認なんて取らなかったからどれぐらいかわからなかったし。


「そうだ!冬夜くん、4体1やるよ!」

「え?」

「流石に4人入れば勝てるはず!」

「綾香さん?」


 綾香は俺の意見など全く聞かずにルールを作りあっという間に準備が進む。結局引くに引けなくなり俺は綾香達と4対1で戦うことになった。




「うそでしょ……」


 ソファに綾香が倒れ込む。他のみんなも失意の色を滲ませながらお菓子を摘んだりしている。ようするに、だ。


「勝っちゃったなぁ……」

「おにーさん強すぎだよ……」

「冬夜くん弟くん以外とやったことないんだよね?」

「だな」

「弟くんに言われなかった?」

「なにを」

「強すぎるとか」

「強すぎるもなにもあいつとは殆ど拮抗してるぞ。勝敗なんてその日の調子ってレベルだし」

「えっ……弟さんもこれぐらい強いんですか」

「今は知らんがやってた時は同じぐらいだったな」


 みんながえぇ……って感じの顔をする。そんなに引かれることなのか……。ここまでくると流石に申し訳なってくるな。


「1時間もしたしゲーム変えるか?」

「それがいいかも」

「みんなでこの中から選んでくれ」


 そう言って俺はゲームのソフトが入ったケースを渡す。綾香達がキラキラした目でそれの中を確認する。結構な量があるし期待してしまうよな。


 ただ問題は遊んでいる人数が5人なことだ。大体のゲームは出来て4人。そうだから最初のゲームを選んでいたけど、どうするかな。


「これにしましょうか」

「それでいいの?」

「えぇ、私と黒は2人でやりますし」

「そっか」

「冬夜くん決まったよ」

「ん、なににしたんだ?」

「これ!」


 そう言って綾香が渡してきたのはパーティゲームの1つだ。スゴロクのマップで戦ったり、協力したり。またはミニゲームだけで遊んだりと様々な遊び方ができるゲーム。


「俺は別に無理に遊ばなくていいんだぞ?」

「でもみんなで遊びたいじゃん?」

「そっか、ならいいのか……?」

「黒ちゃんと白ちゃんなら大丈夫だよ、2人で1人だし」

「なにそのバトルもので聞くタイプの双子設定」

「2人は白黒になった時真の力を発揮するのです」

「コントローラーを2人で持つのには限度があると思うけど」

「そこら辺はご愛嬌だよ」

「それでいいのか……」


 ゲームを起動しながら綾香と軽口を交わす。とりあえずみんなで協力するモードを選んでそれぞれプレイするキャラを選ぶ。それが終わればいよいよ始まりだ。


「よし、勝つよー!」

「「「おー!」」」


 女子高生達がすごいテンションでゲームをする。俺このノリについていけるかなぁ……お兄さんちょっと辛いよ?


「冬夜くんも本気でやってね?」

「わかってるよ」

「よろしい」


 当然です、みたいな顔で頷く綾香。それが可愛くてつい頭を撫でてしまう。綾香の顔がすぐにふにゃりと崩れ幸せそうなものに変わる。


「2人ともイチャイチャしない」

「イチャイチャしてないです」

「おにーさんにとってこれはまだイチャイチャではないと」

「これは……そう、甘やかしてるだけだから」

「それを世間一般ではイチャイチャと言います」

「へー、そーなのかー」

「その棒読みで誤魔化せると思ったんですか……」

「誤魔化す気がないからな」


 ちょっとキリッとしてカッコつけて言ってみる。


「うわぁ……イケメンの無駄遣いだ……」

「イケメンって言うな、俺レベルなんていくらでもいるだろ」

「綾香、おにーさんってこういうタイプなの?」

「そうだよ、冬夜くん自分に関心がないというか、鈍感というか……」

「それは……大変だね」

「そうなんだよね」


 綾香と桜ちゃんが2人でなにか話し合っているが聞こえないのでスルーしてゲームを進める。


 ゲーム自体はとても簡単で道中にあるスターを1番多く獲得したものが勝ちと言うものだ。そのためにサイコロの出目を操作できるやつを使ったり別れ道を選んだりする。途中ミニゲームがありそれの順位でもスターは貰えるのでこれで1位を取るのも重要だろう。


「綾香さん強いですね」

「ふふーん」

「綾香は運が良すぎるな」


 中盤までは綾香が圧倒的な運のよさで大きくリードをとり1位になる。ちなみにその運の犠牲になった俺は最下位、なんでや。


 終盤では俺はなんとか巻き返し、綾香もそこまで運を発揮しなかったのか全員がほぼ拮抗状態になった。


「このゲームで1位を取った人が優勝だね」

「絶対勝つよー!ね、お姉ちゃん!」

「そうね、勝つわよ」

「私も負けないよー」


 綾香以外の3人が負けないと言った意志をみせる。というか綾香は結果わかってそうな気がするな。ミニゲームで結果が決まるならほぼ俺の優勝だし……なんか仕掛けて来そうな気がする。


 そんなことを思い俺最後のミニゲームを始めた。


「これで半分……と」

「あと半分だね」


 ボスの体力も半分になり行動が変わる。変わった攻撃パターンに注意しながら俺たちは攻撃を加える。


 そして最終局面。俺はボーナスがあるトドメを狙って最後の弾を撃つ。がその弾でボスは死なず次に撃った綾香の弾でボスは死ぬ。


「あれ?」

「なんと私1発外しておいたのです」

「まじで?」

「冬夜くんは絶対ラストアタック取ると思ったからね!」

「読まれてたか……」

「今回は私の勝ちだよ!」


 綾香がピースサインをして勝ち誇る。


「私達完全に蚊帳の外だね」

「どうする?とりあえず綾香ちゃんから処す?」

「黒はちょっと物騒すぎね」


 ちょっとだけ嫌な予感がするけど気にしないことにしよう。


 こうして俺たちは俺が晩御飯の準備をするまで5人でゲームを変えたりしながら遊び続けた。

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