お菓子作り


ーー冬夜ーー



 綾香に文化祭のことを話してもらってからはや1週間が経った。


 この1週間は外でも家でもそれなりに忙しく特に綾香の文化祭実行委員の仕事を手伝った時は大変だった。


 今どきアンケートとかの集計を手動でやるのはおかしいと思う。てか俺の時にPCで集計をやってたはずなんだけど。なぜ劣化している。


「先生がその辺の継続を面倒くさがっちゃったんだよね」


 俺がそのことを綾香に聞くとそう返された。いや継続に必要なものなんてないけど。使いまわしで済むことなのに……


 そんなこともあったりしてこの1週間は非常に忙しかった。


 けど今日は土曜日。その疲れを癒す日だ。なら今日ぐらい昼まで寝てもいいだろうと思い俺は惰眠を貪り結果11時まで寝ていた。前日寝たのが12時過ぎだったのでかなりの時間俺は寝ていたようだ。


「ごはん食べるか」


 ほとんど昼ごはんな気がするけど俺はリビングに向かう。


 キッチンを見ると洗ってある皿があり綾香がとっくに起きていたことを示していた。恐らく今は自室で勉強しているのだろう。今日の午後からは綾香の友達が来るのでそれまでは勉強するつもりらしい。


「……菓子パンでいいか」


 パンを入れてある棚を見て適当に見繕い飲み物を入れる。ものの数分でそれらを平らげ俺はちょっと準備をする。


 綾香の友達が来ると言うことでお菓子でも作っておきたいのだ。ついでに自分の欲を満たしたい。




 今回作るのはドーナツで、揚げるのだけは直前にして成型まではやっておきたい。


 ボウルに材料を入れてゆっくりと捏ねていく。無心でやっていればいつの間にか捏ねる工程は終わる。やっぱ作業の時は無心でやるに限る。


「冬夜くーん……ってなに作ってるの?」

「ドーナツの生地」

「今日食べれるやつ?」

「そうだな、みんなが来た時に食べれるようにするつもりだよ」

「やったー!」


 綾香が両手を上げて喜ぶ。その仕草が可愛くて思わず頭を撫でたくなってしまうが今の俺の手は粉とかがついているのでそれはやめておく。


「なんか作って欲しいやつある?」

「チョコかかったやつは食べたいかも」

「半分?それとも全部?」

「贅沢に全部!」


 綾香のお願いを聞いて俺は生地を冷蔵庫にしまう。時間もいいとこなのでお昼ご飯にしよう。綾香もそのつもりで来たんだろうし




 適当にパスタで済ませたお昼ご飯を食べ終えて俺はは冷蔵庫から生地をだす。


「さて、成型だ」

「私もやる!」

「そのつもりで持ってきたよ」


 机にビニールをひきその上で生地を広げる。型は基本のものからちょっと変わり種まで用意しているのできっと様々な形のドーナツが出来上がるだろう。


「私丸いのが並んだやつ作りたいけど作れる?」

「作れるよ。揚げる時にシートを使えばちょっと難しいけど作れるはずだ」

「じゃあそれ作るね!」


 綾香が生地を取り丸く成型していく。俺も基本のドーナツの形に生地を切り抜いて取れなくなったら再度練り直してを繰り返す。


 次々とドーナツは出来上がっていき最後に残ったものを丸めて生地を使い切る。


「よし……で綾香はなにを作ってるんだ」

「キャラクターものだよ」

「それは……くまか?」

「よくわかったね!」

「まぁそこまで綺麗に作ってると流石にわかる」

「揚がった時が楽しみだな〜」


 鼻歌を歌いながら綾香がくまを作るがあれ揚げた時大丈夫なんだろうか?とんでもない化け物になる気しかしないけど。


 小さいとはいえ全身作ってるし、ぬいぐるみみたいとはいえ顔もある。ちょっと不安しかないぞ、あのくまは。


「んじゃぼちぼち揚げてくか」

「私も手伝う?」

「じゃあ揚げるの任せていいか、俺はドーナツにかけるものを用意しとく」

「任されました」


 軽く敬礼をして答える綾香に苦笑しながら俺はドーナツのトッピングを用意していく。チョコだったり砂糖をたっぷり使った甘いソースだったり。あとはチョコチップって言えばいいのか?カラフルな小さいチョコの塊だったりを準備していく。


 綾香が揚げてくれたやつが充分に冷めてから俺はドーナツにトッピングをしていく。


 そして鬼門のくまだが……


「綺麗に揚がったー!」

「おぉ!」

「くまさん……かわいい……」

「正直失敗すると思ってた」

「そこは私の技術の勝ちだね!」

「そうだな、綾香の努力の成果だ」


 見事綺麗に揚がったくまはなにもかけずそのままにしておいて盛り付けていく。大皿に全て盛り付けが終わったところでインターホンがなる。


『こんにちはー』

「桜達が来たみたいだね」

「だな」

「私エントランスまで迎えに言ってくるね」

「頼んだ」


 ぱたぱたとスリッパを鳴らし綾香が部屋を出ていく。その間に俺はドーナツ以外にも適当にお菓子とかを並べて調理の後片付けをする。


「おじゃましまーす!」

「いらっしゃい、みんな」


 遊ぶ準備が完全に整ったところでみんながやってきた。机の上のドーナツに目を輝かせたりまだ見慣れない高い所からの景色をみたりと反応は様々だけど、とりあえず俺は片付けに専念することにする。


 それまでは綾香がなんとかしてくれるだろう。そう思い俺はちょっと、いやかなり面倒くさい揚げ物の片付けを始めるのだった。

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