一人きりの1日


ーー綾香ーー


 校長先生の計らいもあって1日休みを貰った私はいつかのようにぬいぐるみを抱えて気持ち悪い笑みをこぼしていた。


「うへへ……」


 傍から見れば完全に不審者である。ぬいぐるみ抱えて変な笑みを浮かべてベット転がる美少女。……私の美少女属性ってここまで劣化させられるんだね。


「きょうはなにをしよーかな?」


 だらけすぎて発した言葉すらゆるゆるになる。私は今それぐらいだらけているのだ。ついでに現在時刻は朝の10時。起床はいつもより遅めとはいえ8時なので約2時間もこの状態です。


「とりあえず着替えようかな」


 いつまでもパジャマのままじゃいられないし、下着がずっと寝る用なのを変えたい。


「ふんふーん♪」


 鼻歌を歌いながら着替えをする。そもそもなんでこんなに上機嫌なのか、それには理由がある。私は昨日の事があって休みになってるけど本来は学校だ。つまり冬夜くんも仕事で今家にいない。今私はこの家に1人きりなのだ!


 そういうわけで私は冬夜くんの家に1人きりという状況にかなり上機嫌になっています。いろいろとしたいこともあるし。


「ん……もしかしてキツくなってる?」


 着替えをしていると胸が若干窮屈に感じる。最近ようやく成長が止まったかな?と思っていたけどどうやらまだまだ成長をするらしい。


 程よいぐらいで止まってくれるといいけど……せめて白ちゃんサイズぐらいにはとどまって欲しい。その肝心の白ちゃんはまだまだ成長中だから不安しかないけど。


「今度冬夜くんと買い物に行こうかな?」


 その時はぜひ冬夜くん好みの下着を聞いておきたい。いつか誘惑する時のために……


「うへへ……」


 こうして私はしばらくだらしなく朝の時間を過ごしたのだった。






「んー……」


 ペンを口許に当てて考える。今やってるのは課題とかではなく予習だ。先に教科書の範囲を終わらせて授業で復習するタイプの人間なので毎日なにかしらの教科の予習をしている。


「ここ考え方がわかんないな……」


 今度は冬夜くんが好きに食べていいと言ってくれたクッキーを食べコーヒーの飲みながら考える。というかクッキーめっちゃ美味しいんだけど、すごいコーヒーと合う。え、喫茶店開けそう。


「そうだ、夜にでも冬夜くんに聞いてみよ」


 クッキーから冬夜くんのことを思い出して質問すればいいと言うことを考えつく。時間は勉強をしているうちに12時をまわっていてそろそろお腹が空いてきた頃だ。


「冷蔵庫にはなにがあったかな」


 冷蔵庫を開けると色々と食材がある。私はその中からタッパーを1つ取り開ける。


「なんだろ?」


 パカッという音と共に空いたタッパーの中にはチャーシューが入っていた。恐らく自家製の。冬夜くんほんといつこんなの作ってるの?


「これでチャーハンでもつーくろっと」


 そうと決まれば食材を取り出していく。言ってもネギと卵と調味料。この家のキッチンはガスが通っているのでチャーハンも作りやすいだろう。


 白ネギを微塵切りにし次にチャーシューを適当な大きさに切る。卵は割ってかき混ぜておく。温まったフライパンに少し多めの油を垂らしまずは卵を入れる。直ぐにご飯を入れて卵で包み込むようにして混ぜる。この時ご飯の塊をきちんと潰しておく。


 ある程度混ざった所に白ネギ、チャーシュー、塩、コショウを入れて混ぜる。


「よっ……と」


 よくみるフライパンの上を滑らせてひっくり返すやつをやる。これぐらいは最近出来るようになった、主に筋力面……。最後に鍋肌に醤油を少し垂らしてかき混ぜる。そうすればチャーハンの完成だ。


 ちょっと洗い物が増えるけど綺麗なお椀状に盛りつける。インスタントのスープも作れば立派なお昼ご飯だろう。


 後で冬夜くんに見せる用の写真を撮って食べ始める。


「いただきます」


 スプーンで崩せばぽろぽろと崩れ落ちて行くのを見て上手く出来たことを確認する。味もバッチリ決まっていて凄く美味しい。


「……どうせなら冬夜くんに食べさせたかったなぁ」


 そんなことを考えるけど同棲してるしそんな機会いつでも来るよねと思ってそのまま1人で食べ進めていった。






 洗い物も終え遂にやることがなくなる。いや、正確には1つある。……私自身の欲望だけど。


「……おじゃましまーす」


 小声でドアを開けて部屋に入る。そう私は今冬夜くんのお部屋に潜入しています。はいそこ!不審者とか言わない!


「ちょっとぐらいいいよね?」


 ベットに飛び込んでそのまま顔を埋める。


「ふぁぁぁ……!」


 そして思っいきり息を吸い込む。冬夜くんの匂いに包まれて私は物凄く幸せな気持ちになる。正直このまま昇天出来そうな気がする。てか昇天しちゃう。


「冬夜くん……」


 枕を抱き枕のように抱きしめてベットの上を転がる。こんな至福の時間があってもいいんだろうか?罰とか当たらない?当たるとしたらこっそり部屋に入ってることかな?


「そう言えば冬夜くんって……」


 私は1つの考えに至りベットを降りる。そしてそのままベットの下をちょっと探してみる。案の定なにもないけど。


「まぁ冬夜くんに限ってそういうのはないよね。PCもびっくりするぐらい変な履歴とか無かったし」


 でも私が抱きついたりした時は紅くなったりしてるんだけど……うーんわかんないや。


「ま、見つけちゃったらその時はその時だよね」


 そう自分の中で納得して冬夜くんの男の人問題を片付ける。


「それはそうと……もうちょっとだけいいよね?」


 私は再びベットに転がり枕を抱きしめて冬夜くんを噛み締めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る