ご飯会

「あの……ここって割と高めのマンションでは?」

「そうだな」

「ここに住んでるんですか?」

「そうだな」

「もしかしなくても冬夜さんってお金持ちですか?」

「一応自分の金で過ごせるぐらいにはな」

「綾香さんが羨ましい……」


 白ちゃんが綾香を羨ましがってるうちに俺はマンションのオートロックを外し中にはいる。ちなみに桜ちゃんと白ちゃんはぽけーっとしてた。やっぱこの歳でこのマンションは珍しいのかな?


「「「おぉー!」」」


 3人の部屋に入って最初の一言はそれだった。それなりに高層階だから景色とかも綺麗なのかもしれない。俺はもうなれてしまったが。3人が感動しているうちに俺は簡単お菓子と飲み物を用意して、綾香が洗濯物を取り込む。ちらっと横目で綾香のほうを見たが一部の洗濯物だけ先に回収していた。


「これクッキーだけどよかったら食べてくれ」

「ありがとうございます」

「これおにーさんが作ったんですか?」

「ああ、土日とかの暇なときに」

「おにーさんほんとなんでもできるんだね」

「できないこともあるぞ……多分」

「それに確証持てない時点でおかしいよ、冬夜くん」

「このクッキーおいしいー!」


 黒ちゃんがクッキーを食べておいしいと言ってくれる。やっぱ作ったものが好評だと嬉しいな。


 俺は晩御飯の準備とかをするためにリビングに戻ってきた綾香にみんなの対応をまかせて着替えをして料理を始める。


「さてなにを作ろうかな……」


 時間がかかってもいいならローストビーフとかでもいいんだけど、どうせ作るなら凝りたい欲がでるので今日は親子丼にしておこう。


 冷蔵庫から具材を出して準備を始める。まずは割り下に使う出汁の準備から。まずは簡単にできる即席漬けを作る。醤油とみりんを合わせたものを煮詰めて漬け地を作りそれに種とヘタを取り除いた唐辛子を入れる。あとはジップロックに一口大にきったキュウリなどと一緒に漬け地を入れれば即席漬けの完成だ。親子丼に入れる具材のカットだが量はそんなに多くないのでこれはすぐに終わった。


 そうこうしてるうちに出汁が完成したので割り下を作っていく。これは調味料を合わせるだけなのですぐに終わる。あとは残った出汁で簡単な汁物をつくる。あとは鶏肉の表面を先に炙っておけば全ての準備が終わる。


 ここまで調理してあることに気づく。やけに静かだなーとは思っていたけどどうやら全員俺の調理を見ていたらしい。……普通に気づかなかった。


「えーっと……もう食べられるけど食べる?」

「食べます!」


 黒ちゃんから元気のいい返事を貰い仕上げの準備に入る。まずは割り下にネギを入れて火を通す。そのあとに玉ねぎをいれてどちらにも十分に火が通れば鶏肉を入れる。最後に卵をかければ親子丼の完成だ。漬物はみんでつつくような形にして汁物もそれぞれ入れれば完成だ。あとはこれを4人分繰り返すだけ。


「どうぞ」

「いただきます!」


 黒ちゃんに完成したのを渡すとすぐに食べ始める。


「おいひぃでふ!!」

「黒、せめて飲み込んでからしゃべりなさい」

「めっちゃおいしそうだね~」

「1人づつ作るからちょっと待っててな」


 先ほどの手順を繰り返し次の分を作る。順番はじゃんけんで決まったようで桜ちゃん、白ちゃん、綾香の順番で食べるようだ。みんな一口食べておいしいと言ってくれたので自分の中ではかなり満足した。まぁ欲を言うならお酒が飲みたかった……さすがに女子高生の前なので遠慮したが……。


「おにーさんの料理おいしかったです!ごちそうさまでした!」

「「「ごちそうさまでした」」」

「ん、お粗末様でした」

「綾香ちゃんはこれから毎日これが食べれるんだね……」

「羨ましいですね……」

「でもこれだけおいしいと太っちゃいそうだよね」

「あー……冬夜くんナチュラルに甘やかしてくるから気を付けないと」

「みんなデザートとか食べる?」

「言ったそばから何やってるのかな!?冬夜くん!?」

「すまん、片付けしてて聞いてなかった」

「もー……それでデザートってなに?」

「綾香ちゃん結局食べるんだ……」

「デザートは一昨日作ったプリンだな」

「食べる!」

「みんなも食べるか?」

「いただきます」


 白ちゃんが代表してそう言う。やっぱ安定してプリンは強いな。


「プリンもおいひー!」

「だから黒は飲み込んでからしゃべりなさい」

「らってぇ……」

「まぁ、おいしいのはわかるよ」

「冬夜くんの料理ほんとおいしいね」

「そこまで言ってくれるなら作った甲斐があったよ」

「冬夜くん、一人暮らしの時からこんなの作ってたの?」

「時間と体力があるときはな。まぁそうじゃなくても余裕がある時に作り置きとかしてたな」

「ほんとに24歳なんですか。冬夜さん」

「一応24歳だよ、白ちゃん」

「仕事も家事もそつなくこなせる24歳なんていないと思うんですけど」

「うちは親がいろいろ教えてくれたからできることが多いんだよ」

「それを習得してるのがすごいんだけどね」


 確かに親に教えてもらったこと全部覚える奴はいないよな。うちの親も覚えたそばから次のを教えてくるから際限なく覚えたし。


「あ、3人とも帰るときは言ってくれよ?車で送るから」

「流石にそこまでお世話になるわけには……」

「女子高生を夜中に送り出す俺の心が死ぬんで送らせてください」

「まぁここは甘えとこうよ、白ちゃん」

「黒は楽をしたいだけでしょう」

「そうともいう~」

「みんなの家もそんなに離れてないんだし乗せてもらったら?」

「不安なら綾香も乗っけとくから」

「……ではお言葉に甘えさせてもらいます」

「ん、そうしてくれ」


 こうして食後のゆったりとした時間は流れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る