お迎え


――冬夜――


 仕事の昼休憩中にスマホを触っているとメッセージがきた。どうやら綾香からのようで俺は晩御飯いらないとかかなーと思って開いたのだが。


『今日一緒に帰りたいから学校来て』


 ……どーいうことよ。綾香が甘えてるだけなのかそれとも何かしらの用事があるのか。この1文だけでは判断が難しすぎる。とりあえず綾香には迎えに行けばいい時間だけ教えて貰いスマホを閉じる。


「なにかあったのか……?」


 だとしたら車で迎えに行くのがいいが1度帰って行くのも時間がかかるし面倒くさい。元々家から徒歩で行ける距離の学校だから今日ぐらいは歩いていくとしよう。


 俺は急用が出来たので早めにあがりたい旨を部長に伝える。幸いにも快く承諾してくれ俺は3時半過ぎにはあがれることになった。






 仕事が終わり俺は会社を出る。ここから家までは数分なのだが学校は家とは逆方向になるので荷物とかは持ったまま学校の方に歩いていく。


 綾香によると学校が終わるのは4時過ぎとのことなので少し早め着くぐらいで学校にはつけるだろう。ちなみに今の時間は3時半を過ぎた頃。


「この辺最近歩いてなかったな」


 学校までの変わった風景を見つつゆっくりと歩いていく。それから15分程歩いたところで俺は学校に着いた。まだ生徒の影は見えないので今はHR中とかだろうか?


 俺は校門の近くに身を起き綾香を待つことにする。念の為にいる場所をメッセージアプリで伝えておく。


「お、終わったっぽいな」


 チラホラと生徒達が学校を出てくる。その度にこの人誰?見たいな視線が飛んでくるが仕方ないことだと思って割り切る。学校前に大人が立ってたら不審な目で見られるよな。


 綾香が出てくるのはまだかなと首を長くして待っていると見知った人が出てくる。俺が高校時代の時にいた先生だ。あれから8年経ったがどうやらまだこの学校にいたらしい。


「むっ、七草か?」

「お久しぶりです、先生」

「久しぶりだな。どうしたんだ?」

「ちょっと迎えを頼まれてここにいるんです」

「誰の?」

「淡水綾香って言うんですけど……」

「そのクラスなら先程HRが終わったとこだろうしもうすぐ来るだろう」

「ありがとうございます」

「知り合いなのか」

「ええ、幼なじみと言うやつです」

「随分と優秀な幼なじみ2人だな」


 先生が笑いながらそういう。確かに俺たちはスペックが高いのだろう。謙遜するようなとこじゃないし俺も一緒に笑っておく。


「お、あの集団……ってなんか多くないか」

「ですね、なにかあったのかな?」


 綾香らしき人影を見かけたけど周りに人がかなりいる。それも男女問わず。まるで綾香が従えているように見えるがきっと気の所為だろう。


「あ、冬夜くん!」


 綾香が俺のことを見つけて駆け出してくる。それを見て女子生徒はあの人が……?見たいな顔をして男子は俺のことを仇のような目で見てくる。俺知らないうちになにをされたの?


「お疲れ綾香。今日はどうしたんだ?」

「なんとなく冬夜くんと一緒に帰りたくて……だめ?」

「大丈夫だよ、それじゃ帰ろうか?」

「うん!」


 一瞬上目遣いでだめ?と聞いてくる綾香に危うく虜にされそうになったが、なんとか耐えて普通に会話をする。歩き出すと同時に女子生徒が3人ほど近づいてくる。


「あの!私達も途中までいいですか?」

「君たちは綾香の友達?」

「はい」

「えっとね左から桜、白ちゃん、黒ちゃんだよ」

「俺にその呼び方をやれと?」

「冬夜くんなら大丈夫だよ!」

「あー、綾香の呼び方で大丈夫か?嫌なら他のにするが」

「いえ問題ないです」


 先程綾香に白ちゃんと呼ばれた子が返事をする。なんとなくだけどしっかりしてそうな印象を受ける。


「んじゃ帰ろうか」


 俺が真ん中で右に綾香、左に黒ちゃんと白ちゃん。綾香の右に桜ちゃんといった風になって帰ることになった。


 綾香よ……なぜ腕に抱きついている?周りの女子がすげぇキャーキャー言ってるぞ。あと殺意の視線がすごい。


「冬夜さんって背高いんですね」

「一応180あるな」

「運動とかしてたんですか!」

「軽い運動ぐらいなら」

「スポーツはだいたいできるんですか?」

「どれも人並みには出来るぞ」

「冬夜くんの人並みって基準おかしいからね」

「そうか?」

「あれを人並みっていうなら殆どの人がプロだよ」

「そんなことないだろ」

「冬夜くんはもっと自分に関心を持って下さい」

「善処する」


 綾香に呆れられながらも会話は進んでいく。そして徐々に今日一緒に帰ることになった核心に迫っていく。


「そういえばなんで綾香は今日俺を呼んだんだ?」

「えっとね……いろいろあったんだよ」


 そうして俺は綾香から説明を受けた。面倒くさいのでまとめるが要は綾香には既に相手がいることを示したかったと言うことだ。


「それなら仕方ないな」

「うん、今日はありがとね」

「俺も綾香になにかあるのは嫌だしこれぐらいならどんどん言ってくれ」

「じゃあ毎日きて!」

「仕事あるから無理」

「ちぇー……って今日の仕事は?」

「ちょっと早上がりさせてもらった」

「そうなんだ……ごめんね」

「別に早く帰れたしいいさ」


 2人で話しているといつの間にか他の3人が後ろを着いてくる形になっている。


「なんか私達置いてけぼりだね」

「2人の空間って感じですね」

「私も綾ちゃんの婚約者さんと話したいよ!」


 などなど聞こえてくる。そういえば彼女たちは日頃綾香と一緒にいてくれるんだよな。ならちょっとお礼ぐらいしておくか。


「なぁ3人にちょっと相談があるんだけど」

「なんでしょう?」

「今日家で晩御飯食べていかない?」

「えっ?」

「日頃綾香がお世話になっているのもあるからお礼をしたいんだ」

「いいんですか……?」

「おう」

「みんな、冬夜くんのご飯はおいしいよ!」

「いきます!」


 白ちゃんが真っ先に返事をする。


「一応両親に連絡だけ入れさせてください」

「うん、それはしておいてくれ」

「では」


 そう言って桜ちゃんと白ちゃんが連絡をとる。


 こうして綾香の友達3人と晩御飯を食べることになった。

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