七章 気づいたときには

七章 1話

 デートの日から一晩が経ち、また学校が始まった。


 俺と姫花は同じクラスなので、必然的に顔を合わせることになったのだが、どうしても少し気まずくて、今日は話せそうにはなかった。


 実際、今日は登校してから一度も話していない。


 いや、どっちかと言うと、俺が避けてしまっているのかもしれない。

 どんな風にふるまえばいいかが分からないからだ。


「おはよう、冬治」

「あぁ、おはよう」


 俺が教室で自分の席に座って考え事をしていると、颯太が声をかけてきた。


 そんな俺の様子を不思議に思ったのか、颯太は俺に聞いてきた。


「どうしたんだ?そんな浮かない顔して」

「ちょっとな。考え事があって」

「へーお前でも考え事はするんだな」


 俺の答えに意外そうにそう言った颯太は、からかう訳でもなく、いつにもまして真剣なことを、けれどもふざけたような口調で言った。


 何と言うか、話し方はいつも通りなのだが、雰囲気というか、オーラが、いつもとは違い、真面目なモノをまとっていた。


 だからなのか、俺は自然と颯太の声に耳を傾けた。


「ま、考えても分からないことも世の中にはあるんだし、たまには自分の直感を信じてみるのもいいと思うぞ?」

「へ?」


 そんな言葉に、俺は思わず変な声を上げてしまった。


 何を言い出すかと思えば、考えるな、感じろといういかにも脳筋な考えを提示してきたのだ。


 俺は、一体全体コイツのどこから凄いオーラを感じたのか全く分からなくなり、頭がおかしくなりそうだった。


 しかし颯太はそんな俺を無視して話を続けた。


「何に悩んでいるのかは知らないけど、あんまり悩むとむしろ分からなくなるぞ」


 颯太がそう言い終えると、ちょうど予鈴がなった。


 俺はそんな颯太の言葉から、少し、感じるものがあった。

 さっきの脳筋な考え方も含めて、だ。


 颯太は、俺に軽く手を振って、自分の席へと帰っていく。


「ま、そう言うことだ。そんなに考えすぎるなよ」

「あ、あぁ。ありがとう」


 俺は素直に感謝の言葉を述べた。


 確かに、俺はあれからずっと考え続けていた。

 内容は勿論、俺は『恋』を理解することができたのだろうかと。


 しかしその答えが出るわけもなく、こうして学校に来てからも悩み続けていたのだ。


 いや、違うか。

 分からないという時点で、答えは出ているのだ。


 そもそも俺は『恋』を理解することはできていないのだろう。


「直感……か」


 俺は颯太の言葉を思い出した。


 やっぱりそうかもしれない。


 特にこれは自分の気持ちについて話なのだ。

 それなら自分の直感を信じるのが一番正しい選択だろう。


 つまり、考える前に感じたことが正しいということだ。


「答えは出た、か」


 俺はそう呟いて、自分に言い聞かせながら、今は授業に集中することにした。

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