六章 6話

 服を一通り見終えた俺たちは、次は本屋に行って参考書を選ぶことにした。


「どの教科の参考書が欲しいとかあるのか?」

「そうですね、今は数学の参考書が欲しいですね」

「なるほどなるほど」


 本屋に着くと、俺は姫花に要望を聞きながら一緒に参考書を選んだ。


 面白く、分かりやすい。

 それでいてあまり値段の高くないもの。


 それが俺の参考書を買うときの考え方なので、自然とそのようなものばかりをおすすめしてしまった。


 結局、俺は三つほど案を出し、その中で一番スタンダードなものを姫花は選んで購入した。


 そして、店から出たころにはちょうど三時を過ぎたところだった。


「よし、そろそろいい時間だし、喫茶店に行こうか」

「そうですね。いつの間にかこんな時間になってますね」

「ま、楽しい時間は過ぎるのが早いからな」

「そうですね」


 俺たちはそう話し合うと、のんびり喫茶店へと向かった。


 喫茶店まではそんなに時間がかからずに着き、混んでいると言うほどまだ混んでいなかったので、スムーズに中に入ることができた。


「空いていて良かったですね」

「そうだな。正直少し並ばないといけないかと思っていたからラッキーだった」


 俺たちはそう言いながらメニューを開いた。


「たくさんありますね。どれにしましょうか」

「俺は無難にチーズケーキにするわ」

「いいですね、チーズケーキ。私はどれにしようか迷いますね……」


 姫花は、メニューのパフェの所を見て、楽しそうに悩んでいた。


 俺はそんな姫花の様子を眺めながら、なんとも可愛らしいなと思い、思わず少し口元が緩んだ。


「決めました、このチョコのパフェにします!」

「うん、良いと思うよ。美味そうだし」

「ですよね」


 姫花は少し嬉しそうにそう言った。


 俺はそれを聞くと店員を呼び、注文をした。


「楽しみです、パフェ」

「姫花は食べたことないのか?」

「はい。実は今回が初めてです」

「そうなのか」


 以外だとも思ったが、人と出かけないと言っていたので、そこまでおかしな話ではなかった。


 それに、姫花は健康に気をつかう習慣が幼い時からついているという話だったので、無意識下で少し避けていたのかもしれない。


 俺がそんなことを考えていると、さっそく商品が届いた。


「おいしそうですね」

「そうだな。やっぱり姫花のセンスは良かったってことだな」


 パフェが届くと、姫花は興味深々に眺めていた。


 俺はそんな姫花に食べたらどうだとそそのかした。


 そして、姫花は「はい」と頷くと、そっとスプーンを持ってパフェをすくって口に運んだ。


「ん!おいしいです」


 一口食べると、すぐに姫花がそう言った。


 その顔は、水族館でジンベイザメを見たときのように無邪気に笑っていて、とても素直な性格だなと思った。


「それは良かったな。来て正解だった」


 俺は姫花に微笑みかけながらそう言った。


 すると、姫花はパフェを一口分救って、こちらに向けてきた。


「一口食べますか?」

「じゃぁもらおうかな」


 そう言って、俺は姫花に食べさせてもらった。


「うん、確かにおいしい」

「ですよね!」


 姫花はいつにもまして上機嫌にそう言い、すぐに自分もパフェを口に運んだ。

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