六章 近づく終わり

六章 1話

 新学期が始まった。


 三週間という長い長い冬休みが終わり、嘆いている者もいれば、久しぶりに友達と話せて楽しそうにしている奴もいた。


 中には残念なことに、冬休みの課題が終わっておらず、焦ってやっている奴もいた。


 そして、俺はと言うと、自分の席に座って軽く参考書を読んでいた。


「おはよう、冬治」


 そんな俺に話しかけてきたのは唯一仲のいい友達である颯太だった。


「おはよ、颯太」

「相変わらず勉強か?」

「それぐらいしかすることが無いからな」

「そうかねー」


 俺がそう言うと、颯太は少し含んだ言い方をした。


「どういうことだ?」


 意味が分からなかったので、俺は素直に尋ねた。


 すると、颯太はニヤッとして答えた。


「彼女さんの所へ行けばいいんじゃないか?」

「は?」


 俺は思わずそんな言葉を返してしまった。


「別におかしなことは言ってないだろ?」

「それはそうだけどな、姫花はそんなに暇じゃないんだよ。今だっていろんな奴と話すのに忙しそうだし。だから迷惑だから」

「そうか?向こうはまんざらでもなさそうだけど」


 そう言われて、俺は姫花の方を見た。


 すると、ばっちり目があった。

 それもちょっとあったとかではなく、ずっとこちらを見ているような感じだった。


「な?」

「た、確かにな……」

「ほら、行ってこい」


 颯太に背中を押され、俺は半強制的に姫花の元へと向かった。


「おはよう、姫花」

「おはようございます冬治君」


 俺が姫花の元へと着くと、クラスの連中は俺たちに注目したので、俺たちは軽く挨拶をして、世間話のようなものをした。


「今日は始業式だけしたら帰るらしいぞ」

「そうみたいですね」


 しかし、俺は話していて思う。

 人に見られながら話すのって、意外としんどいな、と。


 だって、最近は知らない人がいるところか、家でしか会っていなかったので、こんな注目されながら話すのはすごく恥ずかしい。


「課題は持ってきた?」

「はい。しっかりと前日から準備しました」

「さすが姫花だな」


 少しぎこちなかったが、それでもしっかりと会話ができた。


 だから、今日の所はもういいだろうと思ったので、話を切りあげて自分の席へと戻ることにした。


「それじゃ、また放課後」

「はい、また放課後」


 俺はそれだけを残して席へと戻って来た。


「お前、なんか妙に初々しくて面白かったな」

「うるせー。人に見られながら話すのは慣れてないんだよ」

「主席のスピーチはしっかりとこなしていたくせに」

「それとこれとは話が別なんだよ」


 俺が席に戻ってくると、こんな感じで颯太が俺のことをからかってきた。


 だいたい、あいつが俺に行ってこいとか言ったせいでこんなことになったのだ。

 それをいじるなんてどうかしていると思う。


 俺はそんな愚痴を心で呟きながら、颯太のちょっかいを軽くあしらって、参考書をもう一度開いた。

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