五章 7話

 神社に着くと、程よく出店が出ていて、まだ十時頃だからか、人もそこまで多くは無かった。


「お、そんなに混んでないな」

「ですね。思っていたより空いていますね」

「それじゃぁ、混んでくる前に、とっとと初詣を済ませようか」

「そうですね。行きましょう」


 そうして、俺たちはお参りをしに向かった。


 ちなみに姫花の今日の服装は、着物……ではなく、普通の服だった。


 まぁ一人で着付けはできるらしいのだが、そんなに長居をするわけでもないし、なにより別に俺と二人で行くだけなのだ。

 だから、俺がそれでいいと言った。


 いつも通り黒色のタイツを履き、膝より少し上の短めの薄い桃色のスカートを履き、上の服はベージュのセーターの家から紺色のコートを羽織っていると言った感じだった。


 肩からはこれまたいつも通りのブラウンのポーチを下げていて、下品にならないようにしていた。

 いや、別に斜めにかけたら下品という訳ではなく、タイツを含め、美さの中に清楚さを残しているという意味である。


 まぁ、要するに昨日の少しラフな格好とは違い、しっかりとガードされているのだ。


 ま、昨日は俺の家に来るだけだったからな。

 そこまで気を使わなくても良かったのだろう。


 そう考えると、俺の隣を笑顔で歩く姫花を横目で見て、歩幅を合わせながらゆっくりと歩いた。



 社の前にはそれほど長くない列ができていて、俺たちはその最後尾に並んだ。


「それにしても、まさかこんな風に誰かと一緒に初詣に来るなんてな」


 俺がそう呟くと、姫花はそれを聞いて不思議そうな表情をした。


「冬治君はお友達ときたことは無いんですか?」

「そうだな……友達はいたんだけど、中学までは親戚の家に家族で行ってたから、どうしてもこれたことが無かったんだよな」

「そうなんですね…では、今年は良かったのですか?」

「ん?あぁ、今年と言うか、高校生の間は好きにしていいって言われてるから。特に一人暮らしをしだしたらたまに顔を見せてくれれば正月じゃなくてもいいってずっと言われてきてたから」

「そうですか。それは良かったです」


 俺の回答に安心したのか、少しホッとした声で姫花はそう言った。


 そうこうしているうちに、俺たちの順番が回ってきた。


「よし、それじゃぁ行くか」

「はい」


 そう言うと、俺たちは同時にお賽銭を投げ、手を合わせた。


 ちなみに、俺も姫花も5円玉を投げた。

 理由は、何となく良いご縁があればいいなという話になったからだ。



 お参りを終えた後は、すぐ隣でおみくじを引くことにした。


「ま、初詣と言えばおみくじだよな」

「それはなんとなく分かります。私もおみくじを引かないとなんだか新年を実感できないんですよね」

「それじゃぁ、一緒に開こうぜ」

「そうですね」


 そう言って、俺たちはお金を入れて、おみくじを一つずつ引き、一緒に開いた。


「お、吉か…まずまず、って感じだな」

「私は大吉でした」

「おーいいじゃん!」

「ありがとうございます」

「俺は勉学は……悪くないみたいだな」

「私も、良い感じらしいです」


 しばらくおみくじの内容を互いに見せ合いながら、談笑をした。


 それと、最初に見るのが勉学ってのも、やっぱり俺たちならではだとは思った。


「あ、そうだ。お守りも買ってかないとな」

「そうですね。せっかくですし」


 そう言って、俺たちはお守りをさっと買ってきた。

 勿論、学業成就を買ったなんていう必要もないだろうが。

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