四章 6話

 晩ご飯を食べ終えた俺たちは、片付けをした後二人でソファーに座ってのんびりとしてながら雑談をしていた。


「そう言えば、冬治君と風山くんが仲良くなったきっかけってあるんですか?」


 姫花は、思い出したように俺にそう問いかけてきた。


 以外にもそんなことを聞くので、俺は不思議に思いつつも、考えることにした。


「うーん、どうだったかな」


 俺はそう言って記憶を探ってみる。


 そして、一分ほど考えると、ようやく思い当たる事を見つけ、口を開いた。


「そうだな、まず俺と颯太が仲良くなったのは高校入学してからすぐなんだ」

「そうなんですね」


 俺の言葉に、姫花は驚きと言うか、関心に近い感じでそう返事をした。


 俺はそんな姫花の様子を確認しつつ、話を続ける。


「で、本当に初めて言葉を交わしたのは、入学式の後、俺が主席の挨拶を入学式でしていたから、興味本位であいつが話しかけてきたことだったな」

「それもそうですよね。私も同じクラスにいると知って驚いた記憶があります」

「それはどうも」


 俺は軽く会釈をして、話を続けた。


「それで、その日を境に毎日のようにかわいい子がいたとか、お前彼女作らないのかとか恋愛関係のことばっかりを聞かれたりとか、そんな感じで徐々に距離を詰めてきたんだよ」

「なるほど」

「そう。それで気が付いたら唯一と言っていいほどいつも話してる友達になってたって感じだな」

「そんな感じで風山くんと仲良くなったんですね」

「そうだな……」


 俺は少し苦笑いをしながらそう答えた。


 最初の頃は、なんか妙に絡んでくるなコイツとしか思っていなかったが、今となっては数少ない仲のいい友達の一人になったんだ。

 世の中、どんな風に事が運ぶかは分からないものだな……。


 そんな風に俺は少し物思いにふけっていたが、ふと我に返って話の続きをした。


「ちなみに春咲ともそんな感じで仲良くなったんだ」

「なるほど」


 ついでと言った感じで、俺は颯太にくっついている春先との出会いも話した。


 そして、俺が一通り話し終えると、今度は姫花に話を振った。


「そう言えば姫花って家族と暮らしてるのに、どうしてわざわざ自分で毎日弁当を作ってるんだ?」


 俺は聞いてからしまったと思った。

 家族関係の話って、あまり触れてほしくないことの方が多いという印象が強いので、もしかしたら姫花にもそう言った事情があるのかもしれない。


 しかし、俺の純粋な疑問から出てきた質問に、姫花は少し考える素振りを見せてから、答えてくれた。


「えっとですね、私が昔から料理をするのが好きだったと言うことがまず一番の理由になりますね」

「それは俺と同じだな」

「はい。それともう一つ理由があるんです」


 そう言うと、姫花は一度話を区切ったので、俺は相槌を打って話の続きを促した。


「いつか私が誰かのお嫁さんになった時に旦那様にお弁当を作ってあげられるようにとお母さんに言われて、言わば花嫁修業のようなものですね」

「なるほどな。通りで色合いや栄養バランスが考えられているわけだ」

「はい。お母さんに旦那様の健康管理をしてあげられるようにと言われ続けたので、半分無意識のうちにできるようになりました」


 俺はそんな姫花の発言に心底関心し、思わず大きく頷いてしまった。


「でも、それが分かる冬治君も、相当慣れていると感じますけどね」

「まぁ、俺も中学の時から高校では一人暮らしをすることが決まってたから、今のうちに料理をできるようにって親に言われてたから。それで、一人で暮らすのに栄養管理ができないとダメだと言うことで教え込まれたんだよ」

「お互い似たような理由ですね」

「そうだな」


 俺たちは互いに向き合って苦笑いをした。


「以外にも俺たちって料理が趣味っていう共通点があったんだな」

「そうですね。私も冬治君とはあまり共通点がないんじゃないかと思っていましたので、それが知れて嬉しいです」


 そう言った姫花は、本当に嬉しそうに笑っていた。

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