四章 5話

「よし、じゃぁどこで食べるかだよな」


 晩御飯を一緒に食べることにした俺たちは、これからどこへ向かうのかを相談することにした。


「今日はクリスマスですし、恐らくどこも予約で一杯でしょうからね」

「空いてそうなところと言えば、ファミレスとかだけど……」

「それは少し合いませんね」

「だよな」


 うーんと俺たちは頭を抱えた。


 いい店で食事をしたいという訳ではないのだが、かといってどこでも良いという訳にはいかない。


 何といっても、今日はクリスマスなので少しお祝い的なことをしたいと感じていた。

 先ほど思い出したけど。


 だから、どうしてもいつもいくような安くておいしい、コスパ最強のファミレスは、あまり適任ではなかった。


「しかし、どこも満席、予約などで一杯ですね」

「そうだな。こればっかりは事前に準備しておかないといけなかったな。いやはや、もはや存在すら忘れてしまっていた俺が完全に悪い」

「いえ、私も予約しませんでしたし、第一私が冬治君をお誘いしていますので」

「それはそうだけどな……」


 もう、ファミレスでも仕方ないかと思いながらも、何かないかと探していて、ある店に目が留まり、いい案を思いついた。


「あ、そうだ」

「どうしました?」


 俺がそう言うと、姫花は首を傾げた。


 そして、俺は続きを話した。


「俺の家で食べよう」

「冬治君の家で、ですか?」

「そう。確かに他の店で食べるよりかは劣るけど、家でピザと注文してクリスマス会を二人でやるのもアリかなって思って」

「なるほど!確かにその手がありましたね」


 俺の意見を聞くと、姫花はパーっと表情を明るくして、心良く承諾をしてくれた。


 そんな姫花の様子を見て、俺は少し安心をするとともに、思い立ったが吉日と言うことで、すぐに行動に移すことにした。


「よし、じゃぁそれで決まりだな」

「はい!では、少し買い物をしてから冬治君の家に向かうという形にしましょうか」

「そうだな。さすがにピザだけじゃ寂しいもんな」

「はい。では、そうしましょう」


 こうして、俺たちは俺の家で夜ご飯を食べることとなったので、さっそくスーパーへと食料の買い出しに向かった。



 スーパーでコーラやチキンなどの飲み物や食べ物を買ってきた俺たちは、俺の家へと来ていた。


「勉強会以来ですね、お邪魔させていただくのは」

「そう言えばそうだな。ほんと、時間が流れるのは意外と早いもんだよな」

「そうですね」


 そんな話をしながら、俺たちはソファーに隣り合わせで座った。


「後は、ピザの到着を待つだけだな……」

「そうですね」


 そんな話をしていたら、インターホンが鳴った。


「お、話をしてたら来たみたいだな」


 俺はそう言うと、玄関へと向かいピザを受け取った。


 そして、受け取ったピザを机に置き、準備を終えた俺たちは、少し遅くなったが、晩御飯を食べることにした。


「よし、じゃぁ全部そろったところで、そろそろ始めるか」

「はい、そうしましょう」


 そうして、俺と姫花はお互いに飲み物の入ったグラスを持った。


「それでは、メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」


 そう言って、俺たちは乾杯した。


 ドリンクを飲み、グラスを机に置くと、俺はさっそくピザへと手を伸ばした。


「うん、おいしいな」

「そうですね。私、ピザの出前を頼んだのなんて、いつ振りか分かりません」

「俺もあんまり出前とか頼まないからな。料理作るの好きだから」

「それであれだけおいしいものが作れるんですね」

「おいしいかどうかは分からないけど、まぁそれなりの味になるのは経験値が多いからだと思うな」


 そう言いながら、俺はピザをもう一枚口に運んだ。


「私、冬治君の料理好きですよ?」

「そうか?それならまぁ、ありがとう」


 俺は少し恥ずかしくなって、ピザを一気に口に頬張って視線を逸らした。


「でも、姫花も弁当は自分で作ってるって言ってたよな?」

「はい。ですが、冬治君程上手ではありませんよ」

「それはどうか分からないだろ。実際弁当の彩やら栄養バランスやらはすごく綺麗に考えられていたし、味も毎日自分で食べてるってことは良い方だろ」

「そうでしょうかね?」


 そう言って、少し首をかしげながら飲み物を飲む姫花。


 俺は、そんな彼女にどうにか自信を持ってほしくて、こんな提案をした。


「そうだ、それなら今度料理を作ってくれよ」

「え?私がですか?」

「そうそう。それで、俺が実際に食べて本当においしいってことを証明するよ。何なら颯太と春咲も呼べば信用度が上がるだろ?」

「それはそうかもしれませんね」

「だろ?だから頼むよ」


 俺がそう頼むと、姫花は笑顔を向けて答えた。


「分かりました。それでは、今度私の料理を食べてください」

「勿論喜んで」


 こうして、俺は姫花に手料理をふるまってもらう約束をした。

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