四章 2話

 十二月二十五日、慧城駅。


 俺たちは電車で目的地まで行くので、ここで待ち合わせをしていた。


 移動時間を考え、四時ごろ集合にしていたが、どうやら普段から待ち合わせをしないことが響いた世で、待ち合わせの一時間前に来てしまった。


「姫花には十五分前ぐらいでいいからって言ったのに、自分が一時間前に来てどうすんだよ……」


 俺は自嘲気味な口調でそう言った。


 十二月の終わりともなると冬が本格化し始めるころで、このあたりの時期から、かなりの厚着になる人が増えているような印象がある。


「寒いな……」


 そう思ってしまうのも当然だった。

 現在今の時刻はお日様が傾き始めているため、徐々に寒さが激化していく時間帯だ。

 そもそも今日のこのあたりの最高気温は二桁に届かず、最低気温なんて0度を下回っている。


 いや、マジで寒いな。


 しかし、こうなると本当に困ったもので、寒空の下、何もせずに待たなくてはならなくなる。

 体を動かすにも駅前でできる運動なんて、スクワットぐらいだが、そんなことをしていたら、周りの目線が痛い。


 だから、この俺はどこか暇をつぶせそうなところを探したが、冬休みで且つこの寒さと言うこともあり、どこも満席で飲食店には入れそうにないし、商品を買わないのにコンビニに入るのはマナー違反だし、一体全体どうすればいいんだろうかと考えたが、結局最終的に自分の鞄を探してから、いつもの終着点へと向かった。


「仕方ない、ちょっと勉強するか」


 そう呟いて、俺は携帯用の用語集を開いて暗記を始めた。

 


「お待たせしました、冬治君」

「いいよ全然、ちょっと前に来たところだから」


 約束の時間のちょうど十五分前に到着した姫花は、出会ってそうそう謝ってきた。


 だから、俺は決まり文句を言って、その話を区切らせた。

 そして、俺はこれもまたテンプレートな会話を始めた。


「服、可愛いな。似合ってるよ」

「ありがとうございます、冬治君」


 今日の姫花のファッションは、黒のスカートに黄色のスウェットを合わせたもので、ベージュのコートを上に羽織り、スカートの下にはいつも通り黒のタイツを履いていた。鞄は白の肩掛け鞄を、前回と同じように左肩にかけて左手で持っていた。


 相変わらず清楚の中に美しさを兼ね備えた、まさに 完璧な美を追求した服装だった。


「相変わらずレベルが高いな、姫花のファッションは」

「そうでしょうか?そう言って頂けると嬉しいです」


 そう言って、本当に嬉しそうに微笑む姫花。


 やはり、所作も何もかも美しい。


 俺は、そんな彼女に見惚れそうになっている場合ではないと思い直して、さっそく本日のメインの方へとうつることにした。


「よし、それじゃぁ行こうか」

「はい、そうですね」


 そうして、俺たちは電車に乗り込み、目的手へと向かうことにした。

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