三章 5話
時間が過ぎるのはあっという間で、授業を集中して聞いていると、本当に一日が早く感じるようになる。
こうしてみんなが待ちに待った放課後がやって来た。
俺は最近日常化しつつあるが、しかしまだどこかに少しの緊張が残る下校のお誘いの時間がやって来た。
「姫花」
「はい。少し待っていてください、冬治君」
俺が名前を呼ぶと、姫花はすぐにこちらを向いて、帰りの支度をさっさと済ませた。
そして、先ほどまで会話をしていた友達に礼儀正しく別れの言葉を言い、俺の元へと来た。
「お待たせしました、冬治君」
「いいよ、全然」
小走りで駆け寄ってきた姫花を労いながら、俺たちはならんで教室を出た。
「姫花って、以外にも勉強会とかしたことなかったのか?」
俺は今朝の姫花の反応を見て思っていたことを聞いた。
「はい。何度か誘っては頂いたのですが、やはりあまり仲の良くない方の家にお邪魔するのは抵抗がありまして。それに、男性の居るグループというのもやはり抵抗がありましたし」
「なるほどなー。姫花にも姫花の事情があるって感じか」
「はい」
そう言われて、ふと俺は思い出した事があった。
「それなら、春咲は良かったのか?そんなに仲の良いイメージないし。あと、颯太に関しては男だぞ?」
「大丈夫ですよ。だって……」
そう言った姫花は、俺の前に出てくると、ニコッと笑って続けた。
「冬治君のお友達ですから。無条件に安心です!」
「そ、そっか。まぁ、大丈夫そうならそれでいいよ」
「はい。それでは、また明日」
「おう、また明日」
そう言って、俺たちは別れた。
その帰り道、俺は姫花の言葉を思い返した。
「俺の友達だから、か。なんとも姫花らしい考えだな」
俺はそう呟いて、帰路を急いだ。
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