三章 2話

「すみません。助けていただいて……」


 屋上に着くと、姫花は申し訳なさそうにそう言った。


 俺はそんな姫花に優しく声を掛けた。


「別にいいよ。昨日は大変そうだったから、もし今日も続くようなら、こうしようって決めてたから」

「ありがとうございます……」


 俺の言葉に、姫花は丁寧にお辞儀をした。


 それよりなりより、俺には誰も質問してこないから、正直俺の知名度と言うか人気をますます疑ってしまう……。

 隠れなんだよな、大丈夫だよな……。


「それにしても、案外今の時期、ここは人気かと思ってたんだけどな……」

「そうですね。確かに誰もいないのは驚きですね」


 俺たちが今いる屋上は、最近では珍しい完全開放状態だった。


 周りはフエンフに囲まれていて、端の方に三台のベンチが置かれている。

 そのため、学生には憧れのスポットとなっていた。


 しかし、今はその全てが空いているのだ。


「まぁ、それなら有難く使わせてもらおうぜ」

「そうですね」


 そうして、俺たちは二人で日陰のベンチに座り、膝に弁当を広げて食べ始めた。


「冬治君のお弁当、美味しそうですね」


 俺が弁当の蓋を開けると、姫花がそう言ってきた。


「そうか?」

「はい。とても見栄えが良くて、栄養バランスもしっかりと考えられた、とても家庭的なお弁当だと思います」

「そ、そうか。ありがとう」


 自分の料理をほめられるとなかなか照れ臭いもので、俺は軽く返して、昼食を食べ始めた。

 そんな俺を見て、姫花も昼飯を食べ始める。


「お、姫花のも美味そうじゃん」

「そうですか?ありがとうございます」


 そう言って姫花は微笑んだ。


 姫花の弁当も手作りで、栄養バランスがしっかりと考えて作られていた。

 まぁ、これが分かるのは俺がいつも自分で作っているからってのは自慢になりそうだからやめておこう。


「姫花も自分で作ってるのか?」

「はい。自分で作っています。も、ということは冬治君もですか?」

「あぁ」

「すごいですね」

「いや、それは姫花にも言えることだろ」

「まぁ、そうですね……」


 俺のツッコミに、姫花は納得して、黙ってしまった。


 そりゃ、自画自賛になっていると分かれば、褒めることができなくなるのは当然だろう。


 そんな感じで、俺たちはお昼休憩を一杯一杯まで使ってたくさん話したりしながら昼食を食べた。

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