二章 2話
「えー!じゃあ昨日の水族館が初デートだったんだ!」
四科目の授業が終わり、お昼休みに入った途端、姫花の周りにはいつも以上の人だかりが出来、質問攻めにあっていた。
「はい。少し緊張しましたが、とても楽しかったです」
「そうなんだぁ…。水野さんみたいな美人でも、初めてのデートは緊張するんだー」
「それじゃ、告白はどっちからだったの?」
「えっと、恥ずかしながら私からです」
「「ええ!」」
告白したのが姫花と聞いた途端、姫花の周りのやつと、その輪に混ざれないが耳を傾けていた周りの奴らが、驚きの声をあげた。
「青凪君からじゃなかったの!」
「はい。それどころか一度断られていますので」
「「えええ!」」
更に驚きの声が大きくなった。
いや、驚きと言うか衝撃のようなものだった。驚愕の事実を知ったという感じで、噂を聞きつけて廊下に集まっていた他のクラスのやつまで驚きの声を思わず零していた。
ああ、あの時初めから告白を受けていれば良かったと、俺は今初めて思った。
「よぉ、冬治。大変そうだな」
「ああ。姫花みたいに直接的な被害はないけどな」
「まぁ、お前は大丈夫そうだな」
「今はそうだけど、正直これから男子に嫉妬の目で見られるんだぞ。それに女子からはアレが水野さんの彼氏らしいよって」
「いや、それはないと思うけどな……。お前も水野さんも、結構モテるし納得なんじゃないか?」
「は?」
俺は何かおかしなことを耳にしたように感じたので、もう一度颯太に聞き返した。
すると、颯太はなんでもないことを言うようにもう一度話し始めた。
「いや、だから冬治と水野さんは二人ともモテるから、お似合いだってことで……」
「いやそこ!そこだよ」
「どこだよ」
「だから、俺がモテるって話だよ」
俺は、別に陰キャだとは思わない。
しかし、モテるタイプだとも思っていなかった。
勉強はそこそこできるが、それ以外何も取り柄がない、平均的な運動神経でフツメンの男だ。
そんな俺が、女子からモテると言うのは、はっきり言って皆無に等しかった。
もちろん告白は何度かされたことがあったので、自分のことを低く言いすぎるのは相手に失礼だと思って、ほどほどの自信を持つことにしていた。
しかし自分はモテると思うほどではなかった。正直颯太の方がモテてい…いや、こいつは彼女がいたからモテることはなかったか。
「玉砕したメンツを見ても、お前なら納得だよ。同級生だしな」
「まぁ、確かに先輩とか後輩に取られるよりはマシかもしれないが……」
俺は渋々納得することにした。
あまり否定し続けるよりは自分が折れればいい。
それに、べつに悪口を言われている訳では無いので、素直に受け取ることも大事だ。
姫花の褒め言葉は素直に受け取れたのにな……。
俺はそんなこと疑問を抱きつつも、別の疑問を解消するために颯太にある質問をした。
「でも、なんで俺がモテてたんだ?」
「お前、隠れイケメンってので有名だったの、知らないのか?」
「知らねぇよ……」
「まぁ、お前の耳に入ってたら、隠れじゃないよな」
「確かにな」
俺は衝撃的な事実を知ったが、もう驚くのに疲れたので、至って平然と返して、自分で作った弁当を取り出して食べ始めた。
そんな俺を見て、颯太もご飯を口に運んだ。
しかし、まさか俺がモテていたとは…。
正直驚きはしかないが、それならば姫花の彼氏であっても彼女の評判を悪くすることはないと思うと、なぜか少しだけホッとした。
そして、俺は未だ質問攻めにあっている姫花を労いつつ、スマホを取り出して片手間で勉強を始めた。
すると、そんな俺を見てか、姫花がメッセージを送ってきた。
『少しお話したいことがありますので、放課後いつもの場所に来てください』
丁寧な文章だったが、少し怒ってる?ような気がした。
俺の勘違いであることを祈るばかりだ。
それに、校舎裏がもういつもの場所になっているのがなんとも言えなかった。
いや、姫花が告白した場所だよ?いつもの場所っていう風に言っていいのかな?
やっぱり『恋』は難しいなと改めて思った。
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