第31話

 もう何時間待ったんだか分からない。もしかしたら、まだ30分も経っていないかもしれない。……というのが体感。スマホを見る限りだと2時間くらい。バッテリーは残り70%。こんな何もない森の中じゃ時間が無限にも感じられる。


 静かだね。宮が言う。静かだね。と、私も返す。


 風吹いてるね、と宮が言う。風吹いてるね。私も言う。


「………………。」

 二人とも黙り込んでしまった。なかなか言い出せない。そろそろ分かっちゃいるけど。


「……あのさ、」

 宮はいつも言いづらいことを言い出す時、こう言う。イントネーション、間の取り方、表情、全て同じで、こう言う。

「凪紗さん戻ってこないね。」

 わかっていた。でも、言いたくなかった。結局、宮に言わせてしまった。

「……うん。」

 色々と返し方を考えてみたけど、全然言葉が出てこない。

「そろそろ、行っちゃっていいかな。」

 何も言葉が思い浮かばなくて。

「…………うん。」

 私たちは、ゆっくり、歩きだした。

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