第27話

「宮は大丈夫かなー」

 御迦みかさんが急にそんなことを言うのでびっくりした。

「って、思ってるんでしょ?」

 運転席でコーヒー飲んでる御迦さんはミラー越しに私を見ながら言う。

 宮が心配になるのは当然のことだろう。まだ凪紗なぎささんも、御迦さんにも、完全に心を許したわけじゃない。

「……宮が心配なのはそうですけど……。」

「だよね~。さっきからずっとソワソワしてるもん。」

 見破られてた?何それ、めちゃくちゃ恥ずかしい。

「凪紗なら信用していいと思うよ。アイツ、感情を出すの苦手だから誤解されやすいんだよね。でも、めちゃくちゃ情にもろいタイプだし、いい奴だよ。だって、あの寄生物と共存しようって言いだしたのも、宮ちゃんの延命しようって言いだしたのも凪紗だし。アイツがやってること、全部損得勘定抜きだからね?じゃないとあんなのできるわけないよ。仮になんとかハッピーエンドに持っていっても私たち公務執行妨害で前科持ちだし。あー先のことなんか考えたくねー。」

 そんなこと言いながら御迦さんは笑ってる。笑ってるというか微笑んでるというか。好きな人を語って笑えるっていいな。なんて思った。

 ちょうどその時、御迦さんの携帯が鳴った。なんかの通知。それを確認した御迦さんが言った。こっちを振り向いた御迦さんの顔は真っ青だった。

「事務員さんに見つかったって……。」

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