第25話

「宮川宮の体は寄生に対応できていない。」

 宮の体を一通り検査し終わった凪紗なぎささんの結論だった。


 宮川宮の体は寄生に対応できていない。

 頭の中で何度も反芻してみるが、いつまでたっても咀嚼が進まない。文字が脳内で繰り返し浮き上がっては消えるばかりで意味を理解できない。

 宮はずっと俯いていて、目を合わせてくれない。

「色々と難しい概念を持ってきて説明することは簡単なんだが、君たちみたいな一般人が理解できるよう簡単に説明するならそういうことだ。深く理解したいなら勉強してくれ。」

 凪紗さんは無表情で抑揚のないまま。でも、心なしかいつもよりトーンが低いような。いつもって言えるほど長く付き合ってるわけじゃないんだが。

「何か質問は?」

 相変わらず抑揚がない凪紗さん。隣に立ってる御迦みかさんもずっと俯いたままで、その表情はよく見えない。

 今の私は何も理解できていない。でも、それは本当に何も理解できていないということであって、何が分からないのかもわからないのだ。ただ、自分は理解できていないということだけ理解できる。

「質問がないなら、これからのことを話していいかな。」

 うんともすんとも言えない、言葉を発するのが面倒で堪らない。

 私の返事を待たず、凪紗さんは言葉を続ける。

「私は宮川宮を延命する方法を探すことにした。」

 反射的に目線が上を向く。初めて、凪紗さんと目が合った。

「でも、ここじゃ物資も機材も足りない。だから、大学に行って実験装置を借りようと思う。ちょうど明日は休講日だから学生が居なくて動きやすいはずだ。」

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