第23話

 朝食は安っぽいカップラーメンだった。安すぎるカップラーメンは油揚げ麺の風味がしつこくてあまり好きじゃない。でも、あまり味がしなかった。いや、味はあるはずなんだ。あのしつこくておいしいかと聞かれると、う~ん……という味が。実際、テーブルの斜め向かいに座って同じラーメン食べてた御迦みかさんは終始微妙な顔してたし、途中からほとんど箸が進んでいなかった。

 たぶん味に集中できてなかったせい。おかげというか。

 その理由なんて一つしかなくて。


 宮の方をチラリと見てみた。特に変わった様子がない。やることがないのか、机に突っ伏してずっと自分の掌を見てる。面白いのかな。

 当然そんなわけないんだけど、私も特にやることないから掌を見てみる。

 ………………………………。

 やることがない状況だと、こんなものでも暇つぶしできるものなんだな。手相の皺を追いかけてるだけであと三十分くらいはイケそう。

「…………。」

「ねえ」

「……………………」

「おい」

「…………………………………………………」

「……」

 宮にデコピンされた。

「……何?」

「『何?』じゃないよ。ずっと話しかけてたのに。」

「……気づかなかった……。」

「あれだけ近くで言ってたのに気づかないとかwww面白すぎるでしょwww」

「……うるさいなあ。」

「何してたの?」

「……………………掌見てた。」

「は?何それ。私の声はあんたの掌に負けたの?」

「……だって、宮も掌見てたから。」

「……確かに見てたかもしれないけど。」

「でしょ?」

「……だって、暇だし。スマホもないし。」

 そっか。宮は捕まったときにスマホ取られたままなんだっけ。でも私はスマホ持ってる。圏外だけど。

 ポケットからスマホを取り出してみる。思えば、結構暇な時間はあったはずなのにスマホ開いてなかったな。バッテリーは学校から飛び出した時のまま、まだ80%のまま。でも充電器は持ってない。御迦みかさんとか持ってるかな。

 ふと気づくと宮がこっちを見ていた。いや、私というよりスマホの方。

 圏外だからソシャゲとかはできないけど、オフラインのゲームならできる。暇つぶしには十分。パズルゲームやってみる。

 ちらっと宮の方を見てみると私のスマホを凝視していた。

「……やる?」

 宮の前でスマホをひらひらしてみる。

「やっていいの?」

「やりたい?」

「やりたい」

「じゃあ、30分までね。」

 スマホを渡すと無心でパズルやり始めた。宮を見てると思う。子供にスマホゲームやらせる親ってこんな感じなんだなって。

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