第21話
いきなり公園に突入してきた機動隊。でも、
宮は一瞬目を覚ましていたようだったけど、すぐにまた寝てしまった。今は私の膝の上で幸せそうに寝息を立ててる。起きたらどう説明しよう。
助手席の凪紗さんは運転手の金髪ギャルと「mRNAが」とか「ニューロンへの干渉」だとか、それ以外にも難しい単語を連呼してる。凪紗さんがそういうことを言ってるのは別にいい。金髪のギャルのほうがそんな凪紗さんと普通に会話できてるのがちょっと想像と違った。
全く会話に入れなくて、一言も発さないで後部座席で縮こまってる私をミラー越しに見てたんだろうか。金髪ギャルが声をかけてくれた。
「ごめんねー、変なのに巻き込んじゃって。」
「……いえ、どっちかというと私たちが起こしたのが発端なので。」
「アハハ、別にいいって。凪紗も私も好きでやってるんだから。……そういえば自己紹介まだだったね。私は
「ああ、うん。私は
助手ってことは凪紗さんは教授さんとかなんだろうか。それにしては若いけど。
「あの、色々分からなくて……。なんで急に宮が追われることになったのかとか、宮は何をされるのかとか、宮は本当に危ないのかとか……。」
「君は宮川宮のことが大好きなんだね。」
凪紗さんが呟いた。
「えっ……いや、そんなことは、」
「質問だったね。一つずつ答えさせてもらおう。宮川宮の情報を公開して捜査することを決定したのは君のお父さんだ。アイツの言葉を信じた官僚たちは彼女をかなり危険視している。要は君たちは公権力に追われることになった。かっこいいね。」
なんとなくわかってたけど、でもこうして正面から突き付けられるといまいち実感が湧かない。こんなの映画の中でしか見たことがない。
「……ごめん。茶化すとこじゃなかった。……で、二つ目。」
凪紗さんは指を二本立てて見せる。ピース。
「私は宮川宮を解剖しようだとか変な薬品を投与して実験しようだとか、そういうつもりは……今のところは、ない。そこは安心してほしい。知念教授……君のお父さんは何をしようとしてるかは知らない。」
今のところは、というのが気になる。でも、今のところは、この人は信頼して良さそう……かな。
「三つ目。」
凪紗さんの立ててる指が一本増えた。
「宮川宮によって媒介されて寄生された人間は現在確認されているだけでは三人。」
「三人……?」
「そう、三人。」
凪紗さんは三本立ってる指を振って見せる。
「一人が、」
指が一本になった。
「林道から降りてきた宮川宮を補導しようとした警察官。そして、」
指が一本増える。
「二人目。宮川宮の母親。」
指が三本に戻った。
「三人目が父親。」
宮のパパとママは寄生されてるのがバレてたのか……。というか補導しに来た警官を襲うなんて度胸があるな。いや、こんなに人間らしくなる前の宮ならやるな。うん。
「あと質問は?」
「あっ、えっと、ないです。」
なんか先生みたい。っていうか大学の先生だった。
車に揺られてるうちに寝てしまっていた。
「おーい、着いたよー。」
御迦さんの声で目が覚めるとすっかり日が暮れていた。スマホの時計を見るともう18時を過ぎていた。あと圏外。
わりと新しめの建物。見た目は普通の一軒家みたいだが、周りが鬱蒼とした森なせいで異質感がある。
そういえば、
「宮は……?」
「あ~~~~、そうだね、明日の朝には……多分。今はちょっと凪紗との用事あって……。」
絶対嘘だ。この人、嘘が下手だ。つまり、いい人だ。だから私は湧き出してくる感情をぐっと抑えて、今はこの人たちを信じることにした。宮のためと思って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます