dying, killing

 大丈夫。10年以上続けてきてまだバレてない演技力なんだ。あの馬鹿くらい簡単に騙せる。

 そんなふうに自分に言い聞かせる、放課後。


 私がこんなに思い悩んでいるのに、彼は1ミリも悩みなんかないみたいでツヤツヤしてた。内心めちゃくちゃイラついた。

 でも、ここでこの気持ちがバレたらダメなんだ。

 あんな作戦を実行してしまうなんて、宮川宮の精神はどうかしていたのかもしれない。私は普通じゃなかった。


 星が明るく輝く、昏い夜だった。

「秘密の場所を教えたくて。」

 私が練りに練ったデートプランで彼は最高にテンションが高かった。彼の判断力は最高に鈍っていた。

 彼をやるなら、あそこ。あそこなら私とアイツしか知らない。……あの陰キャなら、見つけても口外せず逃げるだけだろう。あそこしかない。

「何それ。面白そうじゃん。」

 ヤマトは何の疑問も抱かず私についてきてくれた。


「ここ。」

 とても狭い空き地。雑草が生えているだけで何かがあるわけでもない。ここにあるのは、アイツと遊んだ秘密基地の思い出だけ。

「なにここ。狭いし汚いし。」

 ヤマトのその言葉で私がちょっとイラついたのは意外だった。でも、どうせ彼より酷いことを私はする。してしまう。

「ここね、ずっと昔友達とたまに遊んでた場所でさ、」

 彼は私の方を見ていなかった。

 隅に落ちていたコンクリートの塊――”まな板”――を、静かに持ち上げる。

 彼は私の方を見ていない。

 頭上高く持ち上げ、

 彼は私を見ていない。

 思い切り、

 私に彼の視線は向かない、

 振り下ろした。


 十回以上殴りつけた。最初の打撃で脳震盪でも起こしたんだろう。終始ヤマトは弱く呻くだけで助けを求めて叫ぶことはなかった。

 血まみれでちょっと変形してしまった後頭部。最後に”まな板”を思い切り投げる。彼の後頭部に綺麗にヒットすると、小さく跳ねて横に20センチくらい飛んだ。

 肩で息をしながら呟いた。

「だいきらい。」

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