crazy option
その時、宮川宮……私の前には、二つの選択肢があった。
一つは、彼の申し出を受け入れる。もう一つは、その排反。――つまり、彼の申し出を断る。
彼――ヤマトからの申し出は至ってシンプル。男女間であれば特に不自然でもないこと。所謂ところの「美人」である私なら、殊更。今までそういうことが未経験のままだったのが不自然なくらい。
「俺と付き合ってくれ!」
ヤマトとは遊び人な友達――悪く言えば悪友――経由で知り合った。中卒の一人暮らしだそうで、親とは絶交してるだとか。あまり深く聞いたことはないし、他人の家族関係に口を出すのもナンセンスというものだ。同い年で一人暮らしをしているなんてしっかりしているな、と思っていた。それだけ。
思えば、初めて顔を合わせたときから彼の態度の裏には何か感じ取れるものがあった。たまに悪友たちの態度もおかしいことがあったし。それらの情報と彼が面食いであるという情報が(既になんとなく察していたことだったが)繋がったという感じだった。
その日はカラオケやら遊び回った後で、みんなテンションが高かった。ヤマトも計算高い奴で、そんなみんなの前での告白。
失敗した、と思った。私はずっとこういうことを避けつつ立ち回ってきたつもりだったのに。気が付いたら陽キャとかに定義されるグループの真ん中に居て、でも私はそういうテンションとかノリとか、あまり好きじゃない人間で。だからそういうモノの対象に祀り上げられないように気を付けて来たのに。
その日の空気は、ノリは、テンションは、私の本当の希望を許してくれなかった。私の選択がそこに介在する余地はないようなもので。
私の答えは、中国語で是的、ドイツ語でJa、英語でYes、日本語だと、
「……はい。」
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